645 巻き込まれる

霊石が砕けた後、小蛇は一口一口食べ、頭を揺らしながら、矢崎粟にもわかるほど嬉しそうにしていた。

食べ終わると、小蛇のお腹はぽっこりと膨らんでいた。

小蛇は矢崎粟のバッグの中に潜り込み、丸くなって眠ってしまった。

矢崎粟は眠る小蛇の姿を見て、心が喜びに満ちた。

彼女もこの小蛇が大好きで、この出会いは運命だったのかもしれないと思った。

矢崎粟はバッグを持って、来た道を戻り始めた。彼女は足早に歩き、一時間もしないうちに大山を越えて、霊木の谷の範囲内に入った。

キャンプ地まであと数百メートルというところまで来ていた。

突然、矢崎粟はエネルギーの波動を感じた。それは矢野朱里たちが寝ているテントの辺りからのようだった。

誰かが呪術を使っている!

彼女は急いで戻り、テントの端がぼんやりと見えてきた頃、耳に驚きの声と衝突音が聞こえてきた。

騒がしい音は、彼女たちが設営したテントから聞こえていた。

彼女は木に登り、テントの方を見た。

矢野朱里のテントの入り口には、無数の虫が這い回っていて、それらの虫は奇妙で整然とした音を立てていた。

矢野朱里と森田輝の二人は抱き合って、怯えた表情を浮かべていた。

小島一馬と伊藤卓ら男子たちはテントの外に立ち、棒のような武器を手に持って、次々と侵入してくる虫を追い払おうとしていた。

虫はテントの中には入らず、入り口に集まっているだけだったが、それでも恐ろしい光景だった。

小島一馬は虫がテントに入ってこないことに気づき、虫たちがテントを恐れているようだと感じて、「おそらく粟が何か置いていったんだ。虫たちがそれを怖がっているんだろう」と言った。

伊藤卓は頷いて、「そうだな。虫が入ろうとするたびに、何かの力で弾き返されているみたいだ」と言った。

この現象に気づいてから、みんなはようやく安堵のため息をついた。

矢野朱里は慌てた様子で、「目が覚めたら粟がいなかったの。まだ外にいるんじゃない?危険な目に遭ってないかしら?」と言った。

彼女にはわかっていた。これらの虫は確実に彼らを狙ってきているのだと。

標的は矢崎粟かもしれない。

あるいは、背後にいる者が送り込んできて、この機会に粟を消そうとしているのかもしれない。