643 両者共倒れ

矢崎粟は飛び降り、周りを見回すと、一番下に東へ向かう横向きの洞窟があることに気づいた。

矢崎粟は懐中電灯を持って、洞窟の中へ進んでいった。

数百メートル歩くと、手に持つ玉璧の光がますます明るくなり、多くの分岐点に遭遇したが、玉璧の導きに従って進んだ。

最後に一枚の木の扉の前に到着したが、扉を開けようとした瞬間、何か神秘的な力に弾き返された。

彼女はその扉に近づくことができなかった。

矢崎粟はその扉の向こうに法力の波動を感じ、血なまぐさい匂いも漂っていた。

秘密はきっとこの扉の向こうにあるに違いない。

矢崎粟は扉の前をうろつきながら、陣法の陣眼を探し、最後に壁に突起を見つけた。

それを押すと、別の場所からカードホルダーが飛び出してきた。

矢崎粟は手持ちの玉璧をそこに入れると、カードホルダーが玉璧を内部機構に送り込み、木の扉周辺の陣法が瞬時に消え、玉璧も再び飛び出してきた。

この玉璧は確かに鍵だったのだ!

矢崎粟は玉璧を手に取り、中へ足を踏み入れた。

依然として洞窟だったが、この洞窟は外とは異なり、周囲の壁に多くの壁画が描かれていた。

矢崎粟はしばらく見ていると、その壁画には一匹の霊獣と一人の人間の物語が描かれているようだった。人間は偶然霊獣蛇に出会い、深い絆を築いていった。

数年間共に過ごした後、人間は何らかの事情で去らなければならなくなり、霊獣蛇は非常に名残惜しく思った。

人間は霊獣蛇と約束を交わし、玉璧を信物とした。もし誰かが玉璧を持って訪れたら、霊獣蛇はその人を追い払わず、洞窟内の宝を共に分かち合うことを約束した。

矢崎粟は読み終えると、スマートフォンでこれらの壁画を撮影し、さらに奥へと進んでいった。進むにつれて道は狭くなっていった。

最後には、洞窟は一人が体を横向きにしてやっと通れるほどの幅になった。

さらに3分ほど歩くと、矢崎粟はついに光の差す場所を見つけた。洞窟の出口のようだった。

矢崎粟は表情を引き締め、心の中で警戒を怠らず、いつでも敵の攻撃に備えていた。

しかし洞口に着き、中を覗き込むと、彼女は驚愕した。

洞内もまた一つの谷で、谷内には植物が生い茂り、至る所に花が咲き乱れ、蛇行する小川が静かに流れていた。

洞口の近くでは、青草の香りも漂ってきた。

まさに桃源郷そのものだった。