「言わないでいると、隠し立てしているのが余計に気まずくなる」と森田廣は言った。
表向きには、森田廣は責任を矢野常に押し付けていた。
実際には、彼はみんなに、これは矢野常の母親がやったことで、矢野常とは関係ないということを伝えたかったのだ。
矢野常は冷ややかに鼻を鳴らし、何も言わなかった。
森田廣の腹の中は深すぎて、彼が何を考えているのか誰にもわからない。だから矢野常も信用しなかった。
森田廣はさらに言った。「でも、お前の母親は本当にひどすぎる。虎でさえ子を食わないというのに、お前の母親はお前と矢野朱里の命さえも気にかけない。本当の母親じゃないんじゃないかと疑うよ」
矢野常の顔色が悪くなり、「誰にもわからないさ」と言った。
母親の心の中では、彼らは矢野徹の指一本にも及ばないのだ。
森田廣は冷たい声で言った。「俺がお前なら、帰ったら母親と絶縁する。これからはお互い別々の道を行けばいい。そうすれば、もう口出しされることもない」
矢野常は黙ったまま、何も言わなかった。
森田廣は彼のその様子を見て、我慢できずにまた勧めた。「矢崎粟を見習えよ。絶縁するって言ったらすぐに実行して、きっぱりと!切るべき時に切らないと、かえって混乱するだけだぞ!」
彼がそう言い終わると、矢崎弘は不機嫌になった。
矢崎弘は近寄ってきて、森田廣を睨みつけた。「事実は事実として話せ。うちの家族のことを引き合いに出すな」
もともと矢崎粟が家族と絶縁したことは矢崎弘の心の痛みだった。森田廣のこのバカ野郎が口にするなんて、何を言うべきで何を言うべきでないのかわかっていない。
森田廣は両手を上げて降参のポーズをとった。「はいはい、もう矢崎粟を例に出すのはやめるよ。でもこの件について、矢野常は母親と絶縁すべきだと思わないか?」
矢崎弘は頷き、同情的に矢野常を見た。「自分の心に従えばいい!」
そんな悪辣な母親がいては、これからの人生がどれほど辛いことか。
絶縁は、人生の新しい始まりになる。
しかし、結局は矢野常がどう考えるかだ。もし矢野常が本当に未練があるなら、それも仕方がない。
矢野常は拳を握りしめ、深く皆を見つめてから、頷いて言った。「よく考えてみる。心配しないでくれ」
そう言うと、彼は自分のテントに入っていった。