656 情けを容赦しない

彼は矢崎粟を訪ねたくなかった。

しかし、傷口は痒みと痛みが増していき、服と擦れるだけで膿が出てきて、まるで毒に侵されたかのように、とても恐ろしかった。

森田廣は持参していた救急箱から軟膏を塗ってみたが、全く効果がなかった。

五人とも体が辛く、このまま放置すれば、一晩中耐え忍ばなければならず、それは余りにも苦痛だった。

彼らは仕方なく矢崎粟を訪ねることにした。

矢崎政氏は矢崎粟を見つめながら、「粟、薬がないなら、何か方法を考えてくれてもいいんだ。お願いだよ!」

矢崎粟は冷たい表情で言った。「方法はあるけど、なぜあなたたちに教えなきゃいけないの?自分たちで付いてきたんでしょう。毒虫に刺されたのも自業自得よ」

矢崎弘の心は一瞬で冷え込み、その場で固まってしまった。

粟は昔のままだった。彼らはこの件で、粟が彼らに対する見方が変わり、態度も良くなると思っていたのに!