651 正義を取り戻す

藤村敦史の実力はより強く、大円満に到達していない矢崎粟であれば、必ず彼の相手にはならなかったはずで、背後の人物は他人を利用して殺すことができた。

たとえ矢崎粟が殺されても、犯人は藤村敦史に特定され、背後の人物は嫌疑を逃れることができた。

今や矢崎粟は大円満に到達し、実力は非常に強い。

藤村慎一が来たからには、彼女は必ず藤村敦史の別の弟子を打ち負かし、避けられずに再び藤村敦史と対峙することになる。

彼女は藤村敦史を恐れてはいないが、対峙すれば怪我をする可能性がある。

最善の解決策は前後の因果関係を説明し、藤村慎一にも背後の人物の意図を理解させ、二人で真の仇を見つけることだ。

矢崎粟の話を聞き終えた藤村慎一は唇を強く噛み、目つきは険しかった。

彼は愚かではなく、もちろん矢崎粟の意図を理解し、同様に矢崎粟の言葉が真実だと分かっていた。

その人物の勢力範囲からすれば、矢崎粟の玄学の実力を知っているのは当然だが、相手は彼に偽の情報を伝えた。これは彼を死に追いやろうとしているのではないか?

藤村慎一も自分が利用されたことを知った。

彼の実力は矢崎粟に遠く及ばず、このまま対抗を続けても良い結果は得られない。どうやって無事に撤退するか、よく考えなければならなかった。

藤村慎一は目を動かし、考えついたようで口を開いた。「こうしよう。私たちも戦って知り合いになったわけだし、私を派遣した人物の情報を教えるから、私を見逃してくれないか?お互い干渉しないということで、どうだ?もし君が私を捕まえようとするなら、私の師匠は君を許さないぞ。」

彼は半ば交渉、半ば脅迫めいた口調で話しながら、密かに矢崎粟の表情を観察していた。

矢崎粟は軽く笑って、「へぇ?私が誰に派遣されたのか知らないと思っているの?既に知っている情報で取引しようとするなんて、私が損をしすぎじゃない?」

彼女が欲しいものは、それだけではなかった。

藤村慎一はしばらく考え込んでから言った。「君は一方の情報は知っているかもしれないが、背後にもう一派が君を除去しようと密かに狙っていることは絶対に知らないはずだ。表向きは澤蘭子が金を出して私を雇ったことになっているが、実際には、あの人物も君の死を望んでいる。」

彼は意図的にぼんやりとした言い方をし、矢崎粟の興味を引こうとした。