矢崎粟が下を向くと、青い蛇がいた。
いつの間にか、カバンから這い出してきて、地面の虫を欲しそうな目で見つめながら、矢崎粟に向かって舌を出していた。
矢崎粟は尋ねた。「虫が食べたいの?」
小蛇は嬉しそうに頷き、体を揺らした。
ちょうど成長期で、たくさんのエネルギーを必要としていた。これらの虫から漂う匂いは悪くない。あの蜘蛛ほどではないが、なんとか腹を満たせそうだった。
もし藤村慎一が小蛇の心の声を聞いていたら、きっと涙を流して悲しんだことだろう。
これは彼が三年かけて育てた毒虫なのに、なんとか腹を満たせるとはなんだ?これは彼の武器なのに!
しかし、藤村慎一は何も知らなかった。
矢崎粟は蛇が気に入ったようなので、頷いて言った。「好きなら、あげるわ。」
そう言って、彼女は藤村邦夫の側に行き、彼の腰の小さな袋を取った。