先ほど彼女は、堀大師と二人の道家の者が病院の入り口から出てくるのを見かけた。三人とも表情が険しく、足取りも早かった。
彼女が見ている間に、堀大師は去ってしまった。
小林美登里は怒りで鞄を座席に投げつけた。「うまく話が進んでいたのに、兄が矢崎粟を呼び出すなんて」
「それで?」矢崎美緒は身を乗り出し、顔には心配の色が浮かんでいた。
あの人は言った。もしこの件がうまくいけば、運気の五分の一を分けてあげて、芸能界に復帰して映画に出られるようにしてくれると。
運気があれば、この期間も楽になるし、足の怪我も早く治るはずだった。
小林美登里は怒りで顔を青くし、一字一字噛みしめるように言った。「あの忌々しい矢崎粟が、病室で堀大師を追い詰め、二人の道家の者まで傷つけたのよ。もう堀大師にどう説明していいか分からないわ」
これからも道家協会で符紙を買ったり、儀式をしてもらったりする必要があるのに。
堀大師の機嫌を損ねたら、今後そういったことも難しくなる。
「まさか彼女がそんなに大胆だなんて!堀大師は彼女に手を出さなかったの?」矢崎美緒は心の中で悪意を込めて考えた。堀大師が手を出せば、きっと矢崎粟をこらしめることができたはずなのに。
小林美登里は冷笑して言った。「堀大師も役立たずよ。彼の玄学の実力が矢崎粟と同じレベルだったなんて。彼でさえ矢崎粟には手が出せなかったから、あの娘はますます調子に乗ってるわ」
矢崎美緒は胸がドキリとし、心の中が酸っぱくなった。
自分は運が悪いのに、矢崎粟の玄学の実力がまた上がったの?
天は本当に不公平だ。
矢崎美緒はさらに尋ねた。「矢崎粟が病室であんなに横暴なのに、おじさんは止めなかったの?今、堀大師を怒らせて帰らせてしまったけど、誰が小林瑞貴の呪いの毒を解くの?」
たとえ矢崎粟が強くても、小林瑞貴の呪いの毒に関わることなのだから、小林悠一も矢崎粟を止めるべきだったのでは?
小林美登里は兄のことを思い出し、病室での兄の態度を思い出すと、さらに怒りが増した。「ふん!あなたまだおじさんって呼んでるけど、向こうはあなたのことなんて認めてないわよ」
「小林社長は矢崎粟を制止しなかったんですか?」矢崎美緒は目を見開いて、答えを求めた。