矢崎粟はその人の気配を感じ、本能的に嫌悪感を覚えた。まるで何か暗いものに触れたかのようだった。
彼女は確信していた。この人が黒幕でなくとも、善人ではないことを。
矢崎粟は口角を歪めて、「へぇ?私は堀大師のことなんてあまり聞いたことがないわ。どうやら、修行が足りないようね」と言った。
この言葉に、堀大師の側にいた森村辰雄道士は怒鳴った。「無礼者!堀首席に対して無礼な!」
若葉道士も怒りの表情で矢崎粟を見つめた。
病室の雰囲気は一気に緊張した。
矢崎粟は嘲笑うように、「名前を知らないことが無礼なの?堀大師だけでなく、あなたたち二人の道士も見かけ倒しみたいね。もしかして、権力を笠に着て人をいじめる輩なの?」
「下がれ!」
堀大師は後ろを向いて一喝し、矢崎粟に向き直ると、顔には相変わらず笑みを浮かべていた。「矢崎大師の仰る通りです。確かに私の修行は足りず、名声も十分ではありません」