矢崎粟は治療符を取り出し、藤村慎一の心臓の位置に貼り付け、活性化させて心臓の機能を一時的に維持させた。
この符は三時間しか持たない。
三時間以内に藤村慎一の心臓手術を行わなければ、彼は刺し傷で死んでしまうだろう。
「大丈夫か?」原東は藤村慎一の体を支えながら尋ねた。
藤村慎一は掠れた声で言った。「今回は本当に死ぬかと思った。一番危険な時に、矢崎粟がくれた法器が効いてくれなかったら、今頃生きていなかったよ。」
彼は今でも恐ろしさが残っていた。
彼もまた、あの者の残忍さに恐怖を感じていた。
藤村慎一はあの者と協力関係だと思っていたが、まさかあの者が一流の殺し屋を送って自分を殺そうとするとは。鈴木貴志は彼が邪気に当たったのを見て、とどめを刺そうとまでした。
これは、あの者が本当に彼を生かしておく気がなかったことの証明だった。
「コンコンコン!」
三班の班長である澤村未緒が入ってきて、残念そうな表情で言った。「部長、あの者は非常に身軽で、岡本部長の部下たちの援護もあり、追跡に失敗しました。」
彼女は事前に原東からの指示を受けており、あまり力を入れすぎないようにと言われていた。
もちろん、今夜来た人物を追跡するのに全力は使わなかった。
原東と矢崎粟は、藤村慎一が死んだという情報を外に流す必要があり、背後の人物に計画が成功したと思わせることで、次の計画を実行しやすくなるのだ。
藤村慎一はそれを聞いて歯ぎしりしながら怒りを露わにした。「なんて狡猾な!」
数日前、二部で取り調べを受けた時、岡本部長の岡本秋生は彼に、絶対に口を割らず、背後の人物のことを話さないようにと暗示していた。
彼が黙っていさえすれば、背後の人物は必ず彼を救い出す方法を考えてくれるはずだと。
藤村慎一はその時半信半疑だったが、背後の人物に救出される可能性に一縷の望みを持っていた。それは、その人物に救出する能力があるかどうかではなく、救う気があるかどうかの問題だった。
今となっては、岡本秋生の言葉は彼を欺くためだけのものだったことが分かった。
藤村慎一は怒りのあまり血を吐き、胸元は血で真っ赤に染まった。「私が出られなくても、師匠に仇を討ってもらう。我々呪術師一族は絶対に奴を許さない!」
彼の目には怒りが宿っていた。