大呪術師が来れば、自然と藤村慎一の診察をしてくれるだろう。
その時、堀信雄の経脈が断裂したのは、背後の人物の仕業だと分かるはずだ。
藤村慎一も背後の人物をより一層憎むことになるだろう。
邪気を完全に吸収し終えると、矢崎粟は法器を外し、ゆっくりと言った。「最初の三日間は静養が必要です。感情の起伏を抑えてください。あとは皆さんにお任せします。」
彼女は原東に頷いて、その場を去った。
矢崎粟の一連の動作は全て藤村慎一の目の前で行われたが、藤村慎一は何の不審な点も見つけられなかった。
原東は牢屋内の小さな監視カメラの電源を切った。
今回の暗殺事件について、技術部の者に廊下と牢屋の映像を一つにまとめさせ、重要な証拠として保管することにする。
大呪術師が来れば、何が起きたのか自然と理解するだろう。
しばらくして、第三班の班長である澤村未緒が入ってきた。「部長、病院との連絡は済みました。今すぐ移動できます。」
「運び出せ!」原東は即座に命じた。
すぐに藤村慎一は安全に運び出され、澤村未緒が全行程を警護し、行動は極めて秘密裏に行われた。
そして藤村慎一がいた牢屋には、一つの死体が置かれていた。
この死体は大悪人のものだった。邪術を使って百人以上を殺害し、今年になってようやく逮捕された確固たる証拠のある犯人だった。
死後、その体内には藤村慎一の気が注入された。
一流の特殊メイクアーティストによって、反噬を受けた姿に化粧され、顔も別人に作り変えられていた。
背後の人物が来なければ、これが藤村慎一でないことに誰も気付かないだろう。
この死体は完全に本物と見分けがつかず、岡本秋生が見ても異常に気付くことはないだろう。
その夜の十二時、原東は上層部に藤村慎一が侵入者に殺されたと報告した。
翌日の午前中、課長室にて。
岡本秋生は激しくドアをノックした。「吉田課長!吉田課長、私です!」
中からの返事を聞いた後、彼は急いで入室した。「吉田課長、原東があんな大きな過ちを犯したんです。厳しく処罰してください。あんな重要な証人の藤村慎一を死なせてしまったんですよ!」
実際、岡本秋生は未明に情報を得ていた。
藤村慎一が殺し屋に殺されたことを知り、興奮のあまり一晩中眠れなかった。吉田課長が原東にどんな処罰を下すのか想像を巡らせていた。