彼は鞭を何度か振り下ろすと、蔓はほとんど打ち砕かれた。
蔓の枝は全て根元に向かって枯れ、最後には最初の一本の蔓に戻った。
藤村敦史は蔓を一本引き抜き、冷たい声で言った。「もう二度と悪さをするな。お前たちをどうするか分かってるだろう」
次の瞬間、彼は蔓の根から麻酔薬を噴射された。
彼の手は瞬時に動かなくなり、その場で硬直し、蔓は地面に落ちた。
矢崎粟は思わず笑った。「藤村大師、随分と手間をかけてくださいましたね。私の機嫌が悪いのを知って、楽しませようとしてくれたんですか?」
彼女は以前、様々な小世界を転生していた時、一度は花の妖怪として生きたことがあった。
だから、植物を操る能力は当然、藤村敦史よりも強かった。
それに、彼女は蔓から強い怨念を感じ取ることができた。おそらくこの蔓は藤村敦史に強制的に奪われたのだろう。ただ、蔓に霊気が宿り、もう藤村敦史の傍にいたくないと思っているようだった。
矢崎粟が指示を出すと、蔓は興奮を隠しきれない様子を見せた。
藤村敦史は冷たい目で矢崎粟を見つめ、目に警戒の色が浮かんだ。「矢崎さん、冗談でしょう」
彼は矢崎粟の実力がこれほど強いとは思っていなかった!
彼女の実力は彼を圧倒し、その場で余裕を見せていた。
しかし今すぐ降参するのは、彼のメンツが許さなかった!
彼は矢崎粟よりもずっと長く生きているのだ。呪術の分野で矢崎粟に負けるわけがない。
彼は納得できなかった。
そうなると、必殺技を使うしかない。
藤村敦史の目に殺意が浮かび、ずっと手をつけていなかった腰の袋を開き、長い呪文を唱え始めた。
しばらくすると、毒虫の群れが袋から這い出してきた。
黒くて光る毒サソリ、五色に輝く毒グモ、透明な小さな蝶、赤い殻のカタツムリが、一斉に袋から這い出し、矢崎粟に向かって這っていった。
これらの毒虫は、藤村慎一のところで見たものよりも数倍大きかった。
こんなにたくさんの虫がどうやって小さな袋に入っていたのか不思議だった。
矢崎粟は喜色満面で、急いで言った。「ありがとうございます、藤村大師。本当にいい人ですね」
藤村敦史は驚き、胸に不吉な予感が込み上げてきた。
これまで出会った人々は、この毒虫を見ると恐れるか逃げ出すかのどちらかだった。矢崎粟のように期待に胸を躍らせる者などいなかった。