723 賠償

「私の手!」藤村敦史は慌てて叫んだが、矢崎粟が無関心に彼を見つめ、顔には無邪気な表情を浮かべていた。

矢崎粟は言った。「大呪術師はこの程度なの?」

この言葉に藤村敦史の心火が一気に燃え上がった。彼は冷たい声で言った。「矢崎さん、私を甘く見すぎですよ。今日こそ、あなたに私の実力を思い知らせてやります!」

そして、彼はポケットから一本の枝を取り出した。

彼は枝を地面に差し込み、何かを呟きながら、不気味な目つきで矢崎粟を見つめた。

瞬く間に、その枝から無数の蔓が生え出し、それぞれの蔓がどんどん太くなり、外へと伸びていった。

間もなく、それらの蔓は大人の腕ほどの太さになり、空中でゴウゴウと音を立てていた。

藤村敦史は蔓の後ろに立ち、矢崎粟に向かって言った。「今なら降参すれば命は助けてやる。まだ分からないというなら、少し痛い目に遭ってもらうしかないな。」

彼は不気味な笑みを浮かべ、内心得意げだった。

これは彼の切り札の一つだった。

この武器を開発して以来、彼は一度も負けたことがなく、ますます自信を深めていた。

矢崎粟は眉を上げて、「へぇ?」

この蔓は少し面白いものだった。彼女は蔓から霊石の気配を感じ取った。この蔓がこれほど早く成長できたのは、おそらく霊石で養われたためだろう。

そう考えると、藤村敦史の持つ宝物は、彼女の想像以上に多いようだった。

ならば、玄学管理所に遠慮は要らないだろう。

矢崎粟はポケットから朱砂筆を取り出し、空中で何かを描き始めた。すぐにその文様が形を成し始めた。

藤村敦史は彼女の行動を待たずに、蔓に命令を下した。「その女を縛り上げろ。帰ったら、お前たちに良い報酬をやるぞ!」

蔓は理解したかのように、枝を揺らした。

枝は一斉に矢崎粟に向かって伸び、牙をむき出しにしたように見えた。普通の人なら、恐怖で足がすくんでしまうだろう。

それらの枝は猛スピードで矢崎粟に向かって突進し、空を切る音さえ立てていた。

矢崎粟は最後の一画を描き終え、筆を四方の枝に向けて指し示した。「止まれ!」

すべての枝が瞬時に停止し、動けなくなった。

最前列の枝は、矢崎粟の顔のすぐ近くまで迫っており、あと少しで彼女の首を折れるところだった。

矢崎粟は人差し指を伸ばし、枝に触れた!