なるほど、矢崎粟がこんなに焦っていたのは、ここで待ち伏せしていたからか!
彼女は最初から計画していたのだ。彼の大切な虫を霊獣のおやつにするつもりで、彼は馬鹿正直に毒虫を放してしまった。
藤村敦史は血を吐きたい気分だった。
こんなにたくさんの毒虫がいるのに、一匹も霊獣を毒殺できないなんて信じられない。
藤村敦史は笛を取り出し、奇妙な調べを吹き始め、すべての毒虫にその蛇を攻撃するよう命じた。
シュッシュッ!
小蛇は再び口を開け、舌で大量の毒虫を巻き取り、思わず尻尾を振って喜んでいた。
毒虫たちは急かす笛の音を聞いたが、小蛇の威圧に押されて、少しも前に出る勇気がなく、むしろ後ずさりしていった。
数秒のうちに、毒虫はまた半分以上が失われた。
藤村敦史は怒り狂いそうだった。
毒虫たちとの感応がどんどん弱くなり、心も一層痛んだ。
これは彼の最後の切り札だったのに。
矢崎粟が自分の霊獣を制御しないなら、彼がやる!
藤村敦史は面子も気にせず、急いで前に出て呪術で小蛇を殺そうとしたが、一筋の邪気に足を止められた。
その邪気は剣の形をしており、まっすぐ彼に向かって斬りかかってきた。
藤村敦史は危うく斬られるところだった。
矢崎粟は邪気の剣を引き戻し、にこにこしながら言った。「藤村大師、今はあなたの霊獣と私の霊獣が戦っているところです。私たち主人は介入しない方がいいでしょう。大人が子供いじめをするような真似は避けたいものですから、そう思いませんか?」
「ふん!」藤村敦史は怒って袖を払い、足を止めた。
もし強引に前進すれば、きっと邪気に当たってしまうだろう。
矢崎粟がどうやって邪気を剣の形に凝縮したのか分からないが、まさか彼を押し返すことができるとは!
この実力、若い世代最強と呼ばれるだけのことはある。
近づけないなら、せめて毒虫を回収できるはずだ!
藤村敦史は長い調べを吹き、毒虫たちを呼び戻した。調子は急いだものだった。
早くしないと、小蛇に全部食べられてしまう。
地面に残った毒虫たちは笛の音を聞くと、必死に戻ろうとした。まるで最初から逃げ出したがっていたかのように。
しかし、若くて元気な毒虫だけが戻ってこられた。
少しでも遅い者は、みな小蛇の腹の中へと巻き込まれ、今日のご馳走となった。