藤田川は白い衣装を身にまとい、相変わらず穏やかな表情で矢崎粟に微笑みかけて言った。「来てくれたんだね。」
矢崎粟は近づき、藤田川が自分と囲碁を打っているのを見て、彼の向かい側に座り、一手打った。
矢崎粟は言った。「こんな大事な時だから、もちろん来るわ。」
この件の重要性から考えて、藤田川は第三者には話していないはずだ。
藤田川の護法ができるのは、矢崎粟しかいない。
師匠兄は彼女を多く助けてくれた。だから彼女も師匠兄に恩返しをし、力を貸さなければならない。
藤田川は微笑んで言った。「もし失敗したら、私はこの世界から消えてしまうかもしれない。その時は、私の庭にある物を見て、気に入ったものがあれば持って行ってくれ。置いておいても道家協会に回収されるだけだから。」
小道士については、既に世話を頼んである。
これらの言葉を聞いて、矢崎粟は心が重くなった。
彼女はゆっくりと言った。「師匠兄、もしあなたが成功できないのなら、この世界で誰も成功できないわ。この秘術が存在するということは、成功した人がいるということ。自分を信じて。」
藤田川は声を上げて笑った。「その通りだ!」
小道士は藤田川が笑うのを見て、思わず笑顔になった。「矢崎姉さん、あなたが来ると師匠が笑うんです。これからもよく庭に遊びに来てください。そうすれば師匠ももっと笑顔になれます。」
彼は機転を利かせて矢崎粟にウインクした。
矢崎粟は仕方なく頷いた。「いいわよ、師匠が追い出さない限り、遊びに来るわ。」
「師匠が追い出すわけないじゃないですか!」小道士は顔をしかめて、笑いながら走り去った。
彼から見れば、師匠はいつも一人で庭に座っていて、とても寂しそうだった。
藤田川は真剣な表情で矢崎粟に言った。「予感がするんだ。今回はとても困難になるだろう。もし私がいなくなったら、あの者には気をつけろ。決して油断するな。」
矢崎粟は少し考えてから、重々しく言った。「わかったわ。」
彼女は知っていた。自分とあの者との戦いは、まだ決着がついていないことを。
二人はしばらく話し合った後、藤田川は言った。「出発する時間だ。ここは雷の試練に耐えられない。庭に残って、ここを見守っていてくれ。」
矢崎粟は頷いた。「気をつけて。良い知らせを待っています。」
藤田川は頷き、最後の一手を打った。