飛行機に座っていると、矢崎粟は突然、病室にあった紙切れのことを思い出した。
一人ではない、行ったり来たり。
これは一体どういう意味なのだろう?
澄夫は彼女に何かの手がかりを示唆しているのか?もしそうなら、澄夫はどうして彼女が何を調べているか知っているのだろう?
それとも、澄夫もその一部で、彼女が知っている以上のことを知っているのだろうか?
全ての疑問に、答えは見つからなかった。
しかし矢崎粟は知っていた。澄夫は決して悪い人間ではなく、ただ何らかの理由で真相を話せないだけだと。
きっと、また会える機会があるはずだ。
矢崎粟は飛行機の中でぐっすりと眠り込み、目が覚めた時には、中華街の隣町の空港に着陸していた。
彼女はタクシーで中華街に戻った。
小さな庭に戻ると、部屋の中の小蛇が気配を感じ取り、素早く窓から這い出してきて、矢崎粟に向かって舌を出し、目には不満げな表情を浮かべていた。