矢崎粟は中庭で待っていた。
小道士は門の方を見つめていた。
矢崎粟は言った。「安心して、あなたの師匠は成功したわ。今は中華街の中で誰も彼を傷つけることはできないわ」
そう言いながらも、藤田川が戻ってこないので、彼女も心配だった。
最後の一歩で問題が起きたら、それこそ大損だ。
矢崎粟は師兄を迎えに行きたい気持ちが湧いてきたが、師兄に留まるように言われたことを思い出し、動かなかった。
一方。
藤田川は山を下り、まず別の屋敷で服を着替えてから、道家協会に戻った。
しばらくして、彼は中庭に入ってきた。
彼は感謝の表情で言った。「粟、今回君が助けてくれなかったら、私は消滅していたかもしれない。ありがとう!」
あの時、彼の法力はほぼ尽きかけていて、矢崎粟が邪気の柱を止めていなければ、秘術を完成させることはできなかっただろう。
矢崎粟は少し笑って言った。「師兄が私にそんな遠慮することないでしょう?」
彼女は師兄に多くの助けを借りていたので、これで恩返しができた。お互いに借りはない。
藤田川は頷いた。「そうだね……あの時、君はあの邪気の柱が現れた場所を見たかい?」
矢崎粟は答えた。「邪気の柱は道家協会の中にあったわ。小院からとても近くて、300メートルも離れていなかったわ。心当たりはある?」
藤田川は首を振った。「そんなに強い法力を持つ者が誰なのか、見当もつかない」
あの邪気の柱も極めて強い法力が必要だった。
矢崎粟は少し笑った。「大丈夫よ、あの人はあなたの反撃を受けて、今は反噬で相当苦しんでいるはず。しばらくは何もできないでしょう」
藤田川は笑って言った。「そうだね!」
この結末は確かに気分がいい。
矢崎粟は続けて尋ねた。「あの人は一体何が欲しかったの?」
二つの可能性がある。中華街を欲しがっているか、藤田川の肉体を欲しがっているかだ。
矢崎粟にはどちらなのか分からなかった。
もしあの人が中華街を手に入れれば、自分の城を持つことになり、悪事を働くのも思いのままだ。
もしあの人が乗り移ろうとしているなら、藤田川の肉体は最高の選択肢だ。容姿端麗で、実力も高く、地位も高く、才能も抜群で、不老不死の体まで持っている。
藤田川は躊躇なく答えた。「あの人は私の肉体が欲しいんだ」
これは彼の予感だった。