755 損をしない

「そうなの?」矢崎粟は疑わしげにもう一度尋ねた。まるで考えているような様子を見せた。

とにかく、簡単に承諾するわけにはいかなかった。

そうでなければ、背後の人物に気づかれてしまい、その後の計画が台無しになってしまうだろう。

小林美登里は説明を続けた。「堀首席がこれをするのは、あなたのためだけじゃなくて、東京と南西部族の平和のためでもあるのよ。考えてみなさい。道家協会の首席なんだから、国内の紛争を処理するのは当然でしょう。あなたと藤村敦史の争いも彼の管轄なの。これは彼の職責に過ぎないわ。深く考えすぎないで」

彼女の見方では、矢崎粟は損をしないのだった。

「もう少し考えさせてください」矢崎粟は躊躇いながら言った。

小林美登里はすぐに説得を続けた。「考える必要なんてないわ。この件は私の言う通りにして。これは命に関わる大事なことよ。どうしてそんなに優柔不断なの?堀大師も私の顔を立てて、わざわざ仲裁に入ってくれるのよ」