769 厚かましい

藤村敦史は頷いて、別荘の庭から立ち去った。

彼は矢崎粟が自分を利用して、堀信雄の住居を荒らそうとしていることを知っていた。

しかし、彼はそれを気にしなかった。

彼は堀信雄の住居にある物に完全に魅了され、それらを手に入れたいと思い、この機会に鬱憤を晴らしたいとも考えていた。

たとえ堀信雄の死を直接見ることができなくても、彼は利益を得られた。

東京の自宅に戻ると、すぐに息子に航空券を予約させ、数人の玄学師を雇って一緒に行くことにした。

藤村敦史は決めていた。今回は弟子の仇を討つという名目で行き、誰が邪魔をしても、その者に思い知らせてやる!

庭には矢崎粟だけが残された。

矢崎粟は庭に一人で暫く立っていたが、この法陣内の邪気が外に漏れ出ないことを確認すると、立ち去ろうとした。

小林美登里と矢崎美緒もリビングから走り出てきた。

彼女たちは矢崎粟がまだ去っていないのを見て、慌てて呼び止めた。

小林美登里は我慢できずに叫んだ。「粟、まだ行かないで。」

「何か用?」矢崎粟は眉を上げ、腕を組んで彼女を見た。

小林美登里は気持ちを落ち着かせ、躊躇いながら言った。「前のことは私が間違っていたわ。許してくれない?」

矢崎粟は皮肉な笑みを浮かべながら彼女を見た。「あなたならどう思う?もし自分だったら、許せる?」

小林美登里は一瞬固まり、自分のしてきたことを思い出した。

もちろん許せるはずがない。

小林美登里はため息をつき、懇願するように矢崎粟を見た。「最後にお願いがあるの。この庭がおかしいの、元に戻してくれない?」

矢崎粟は笑い、彼女の厚かましさに感心した。

矢崎粟は冷たい声で言った。「暇はないわ。この陣法は二ヶ月後に自然に消えるわ。それまで待てないなら、他の玄学師に法術を頼めばいいでしょう。」

そう言うと、彼女は立ち去ろうとした。

小林美登里は心の中で不満を感じた。謝ったのに、実の娘なのに、少しも手伝ってくれないなんて。

本当に親不孝な子!

小林美登里は我慢できずにまた言った。「粟、あなたは私の実の娘よ。お願いだから手伝って!時間はかからないわ。」

矢崎粟は冷笑して言った。「厚かましいわね。無償で手伝ってほしいなら、そばにいる養女に頼めばいいじゃない。彼女の実の父親は道家協会の首席よ。私よりずっと優秀だわ。」