777 陥れる

森村邦夫は矢が紙人形を貫いた瞬間、見覚えのある気配を感じた。その人物が藤村敦史だと気づいた時には、もう遅かった。

森村邦夫は顔を歪め、信じられない様子で尋ねた。「まさか藤村敦史の気配を利用して紙人形を作ったのか?」

つまり、彼の攻撃は藤村敦史に当たったということか?

堀信雄も怒って罵った。「矢崎粟、お前は本当に小人物だな。なぜ何度も道家協会と呪術師の里の関係を挑発するんだ?お前は自分を正人君子だと言っていたじゃないか?」

これまで人を陥れる側だった彼が、こんなふうに陥れられたのは初めてだった。

彼は心の中で怒りが込み上げてきた。

あまりにも悔しかった!

矢崎粟はにこにこしながら言った。「私は一度も自分が正人君子だとは言っていませんよ。それに、あなたたちのような陰険な小人を相手にするなら、その手口で仕返しするのは当然でしょう。」

そしてその時、ちょうど車で中華街に入った藤村敦史が突然血を吐いた。

隣にいた藤村隼人は恐怖の表情を浮かべ、手を伸ばして彼を支えながら慌てて叫んだ。「父さん、どうしたの?大丈夫?」

もし父が死んでしまったら、呪術師の里は混乱に陥るだろう。

南西地方全体が混乱に巻き込まれることになる。

藤村敦史は無数の剣で刺されたような感覚があり、体は骨まで冷え切って、今にも死にそうだった。

彼は胸からかかしを取り出した。

このかかしは彼の身を守る切り札で、誰かが彼を攻撃するとかかしに転移されるため、その場で死ぬことは免れた。

藤村敦史はその殺気の流れをたどり、森村邦夫の気配を感じ取った。

間違いなくそれだと確信していた。

以前、彼も中華街に入ったことがあり、森村邦夫とも一度会ったことがある。その時偶然、森村邦夫と堀信雄が師弟関係にあることを知った。

だから、すぐに堀信雄が森村邦夫にやらせたのだと推測できた。

堀信雄は復讐のために、殺しの一手を使うことも厭わなかったのだ。

藤村敦史は鼻から流れる血を拭い、目に濃い憎しみを宿しながら、怒りの声を抑えきれずに叫んだ。「お前たち二人を殺して、必ず復讐してやる!」

この仇を討たずには、南西地方には戻らない。

藤村隼人は彼を支え起こし、独自の秘技で治療を施した。

藤村敦史の顔色が徐々に良くなってきた。