797 ろくでなし

息子たちが皆、小林美登里を見捨てたからこそ、今こそ付け入る隙があると思った。

まずは母の小林美登里の面倒を見て、彼女の機嫌が良くなったら、お金を要求しようと考えた。

小林美登里が離婚したら、きっと大金を手にするはずだから、もっと多くの利益を得られるだろう。

お金目当てだとしても、小林美登里の世話をするふりをしなければならない。

小林美登里は怒りに満ちた目で彼女を睨みつけ、いらだたしげに言った。「あなたに何の関係があるの?あなたのような厄介者を置いていなければ、夫や息子たちとこんな風になることもなかったわ。あなたは災いを呼ぶ存在よ」

彼女は後悔した。なぜ最初から矢崎美緒を引き取って一緒に住もうとしたのだろう?

矢崎夫人として平穏に暮らしていれば良かったのに。

今や夫は離婚を求め、息子たちは皆、心を離してしまった。

残されたのは矢崎美緒だけ。

最も重要なのは、矢崎美緒には実の両親がいて、いつ彼女を置いて実の両親の面倒を見に行くかわからないということだ。

堀首席は逮捕されたとはいえ、矢崎美緒にはまだ実の母親がいるではないか?

矢崎美緒の実の母親には夫がいると聞いている。

もし矢崎美緒が去ってしまえば、また笑い者になってしまう。小林美登里は考えれば考えるほど、損をしたような気持ちになった。

矢崎美緒は驚いて即座に跪き、目を真っ赤にして言った。「お母さん、ごめんなさい。全て私のせいです。兄たちも粟の味方をしたくて、私を見下しているんです。お父さんは年を取って、娘が欲しいと思うのも当然です。でも私にはお母さんしかいません。どうか私を見捨てないでください」

彼女は小声で泣いていた。

小林美登里は眉をひそめた。「どういう意味?」

矢崎美緒は続けた。「表向きは父が私の両親のことで怒っているように見えますが、私にはわかります。父は粟を戻したがっているんです。でも私がお母さんの側にいる限り、粟は戻ってこないでしょう。だから父は怒っているんです。私に自主的に出て行ってほしいんです……」

そう言いながら、大粒の涙を流した。

「そういうことだったの?」