790 仇敵の子

二人を見送った後、矢崎粟は矢崎正宗に電話をかけ、背後の人物が捕まったことを伝えた。

彼女は自分が誘拐された真相も話した。

矢崎正宗はそれを聞いて、怒り心頭で尋ねた。「粟、小林美登里は真相を知っていながら、それでも矢崎美緒を手元に置くことを選んだのか?」

「はい、堀首席がすべての事情を説明しました」と矢崎粟は答えた。

矢崎正宗は怒りで首筋の血管が浮き出るほどで、顔色は険しかった。

彼は以前から予想していた。矢崎美緒が矢崎家に入ったのは背後の人物と関係があり、矢崎美緒の身元も疑わしかった。

しかし、矢崎美緒がその人物の子供だとは思いもよらなかった。

矢崎美緒の母は粟を誘拐した共犯者だったのだ!

この連中は人をなめすぎている。

敵の子供を二十数年も育て、愚かな妻は矢崎美緒を溺愛し、矢崎美緒のために何度も粟を叱りつけた。