825 ハッカー技術

「あなたじゃないの?」矢崎美緒は躊躇いながら尋ねた。

彼女の心の中で半分ほど信じていた。結局のところ、彼女を暴露することは安藤昭にとってもあまり利点がないのだから。

安藤昭はいらだたしげに言った。「お前が困ることで俺が喜ぶとでも思ってるのか?」

矢崎美緒は考えて、それももっともだと思った。「じゃあ、教えて。私たち二人のチャット履歴を、あのゴシップサイトはどうやって手に入れたの?」

答えが得られなければ、安藤昭への疑いは晴れないままだ。

安藤昭は冷笑して言った。「俺の推測だが、誰かがハッキング技術を使って俺たち二人の携帯に侵入したんだろう。そうでなければ、お前と実母との写真があんなにたくさん同時に流出するはずがない」

ハッカーは安藤昭の携帯からチャット履歴を、矢崎美緒の携帯から写真を入手したのだ。

矢崎美緒は眉をひそめた。本当にハッカーなのだろうか?

でも、誰が彼女の情報を盗むためにハッカーを雇ったのだろう?

矢崎美緒はその疑問を口に出した。

安藤昭は言った。「今、俺たちにできることは一つしかない。それは凄腕のハッカーを見つけて俺たちの携帯を調べてもらうことだ。もしその犯人の痕跡が見つかれば、手がかりを追跡できるはずだ」

矢崎美緒はため息をついた。「問題は、どうやってハッカーを見つけるかよ。私はハッカーなんて知らないわ」

「それは心配するな。俺がハッカーを知ってる。今日の午後二時半に、来てくれればいい」安藤昭は素早く言った。

矢崎美緒は仕方なく同意した。「わかったわ。じゃあ、その時に」

二人は電話を切った。

昼食時、矢崎美緒は少し上の空だった。

小林美登里はそれに気付いた。「どうしたの?」

矢崎美緒は慌てて説明した。「ただ食欲がないだけよ。最近あまり食べる気がなくて。お母さん、気にしないで」

「そう、お腹が空いたら竜田おばさんにラーメンを作ってもらいなさい。痩せないようにね」小林美登里は心配そうに言った。

矢崎美緒はうなずいた。

彼女は午後の出来事を心配し、外の世間の評判も気になっていたから、食事が喉を通らなかったのだ。

結局、彼女のあの発言が全て暴露されてしまった。

彼女が丹念に作り上げたイメージがまた崩れてしまった。