安藤昭は小声で言った。「この人は中華街の技術の達人だよ。予約を取るのに苦労したんだ。侮るなよ。世界のハッカーランキングでも上位5位に入ってるんだから」
矢崎美緒は疑わしげな表情で「本当にそんなにすごいの?」
しばらくすると、烈狼は大声で叫び、二人の方を喜びに満ちた目で見つめた。「侵入の痕跡を見つけました!早く見てください」
矢崎美緒は驚いて、急いで近寄った。
まさか本当に彼女の携帯が監視されていたの?
矢崎美緒がパソコンの画面を見ると、見覚えのあるIPアドレスがいくつか表示されていた。
「これが矢崎さんの携帯を監視していたアドレスです。一つは道家協会の敷地内、もう一つは中華街近くの山の上にあります。この二箇所からあなたの携帯の画面を頻繁に閲覧していました」烈狼はにこやかに矢崎美緒に告げた。
矢崎美緒は信じられない様子で「間違いないの?この二箇所から私の携帯を盗み見されてたって?」
「私が見つけた証拠はそう示しています」烈狼は自信に満ちた表情で答えた。
矢崎美緒は「この二箇所は確か...」
まさしく堀信雄の屋敷だった!
道家協会の敷地は会長の屋敷内にあり、中華街近くの山の位置も自分が訪れたことのある屋敷の中だった。
つまり、実の父が彼女を監視し続けていたということだ。
「でも、おかしいわ!」矢崎美緒は考え込んで、困惑した表情を浮かべた。「その二箇所とも父の住所だけど、今は刑務所に入ってるはずよ。どうやって私の携帯を見られるの?」
「誰かが携帯を利用しているのかもしれません」烈狼は合理的な推測を述べた。
矢崎美緒は眉をひそめ「じゃあ、この二箇所からの監視を止める方法はある?」
「もちろんです。美しい淑女のためなら喜んで」烈狼は笑いながら答えた。
安藤昭は不吉な予感を感じていた。この烈狼は矢崎美緒を狙っているんじゃないのか?
烈狼とは偶然知り合った。
数日前、携帯を無くして、ネットで携帯を探すハッカーを探していたら、烈狼が見つけてくれた。
すぐに携帯は見つかった。
今回も、矢崎美緒の携帯を調べる話を聞いて、烈狼は喜んで引き受けた。
しかし、報酬の話は一切出なかった。
男の直感として、安藤昭は烈狼が矢崎美緒を見る目つきに違和感を覚えた。まるで罠にかかった獲物を見るような目だった。