827 真相

この時、矢崎美緒も事の真相を察していた。

烈狼は父親が雇ったハッカーで、矢崎美緒の携帯に仕掛けられたものも、全て烈狼が監視していたのだ。

だからこそ、あんなに早くIPアドレスを見つけられたのだ。

「安藤昭!許さないわよ!」矢崎美緒は怒り心頭で、手近な枕を掴んで目覚めたばかりの安藤昭に投げつけた。

安藤昭は驚きの声を上げ、より目が覚めた。「何があったんだ?」

彼がベッドを見ると、矢崎美緒の全身が青あざだらけだった。

二人は一時期肉体関係を持っていたので、これが何を意味するのか分かっていた。安藤昭は驚いた顔で、「あの中年男にやられたのか?」

つまり、あの男の標的は矢崎美緒だったということだ。

「あの人以外に誰がいるのよ?」矢崎美緒は涙を流した。

あんな気持ち悪い男に汚されてしまった。

安藤昭は疑わしげな表情で、「あの男は一体誰なんだ?俺たちのことをよく知ってるみたいだけど。」

矢崎美緒は冷たい声で言った。「あの男は私の携帯に監視プログラムを仕掛けたハッカーよ。泥棒を捕まえろと叫びながら、こんな芝居を打ったのよ。憎たらしい奴、もし次に会ったら必ず殺してやる!」

「えっ?じゃあ、俺に近づいてきたのもお前が目的だったんだな。」安藤昭は合理的に推測した。

矢崎美緒は歯ぎしりしながら、「最低な奴...」

「このまま済ませるのか?」安藤昭は恐る恐る尋ねた。

矢崎美緒は怒鳴った。「警察に通報して、私が虐められたことを皆に見せろっていうの?それに、あなたのことも許さないわ。共犯者よ。」

「俺はあいつと一緒じゃないぞ。俺だって被害者だ!」安藤昭は不満そうに言った。

矢崎美緒は彼を睨みつけた。「あなたがあの人の身元を確認しようとしなければ、私はこんな目に遭わなかったはず。責任がないって言い切れる?」

今の彼女は怒りを抑えきれなかった。

安藤昭は床から立ち上がり、怒りながら言った。「俺だって騙されたんだ。さっきも言ったように俺も被害者だ。お嬢様の威張った態度はもういい加減にしろよ!お前はもう矢崎家のお嬢様じゃないんだぞ!」

彼は矢崎美緒の高慢な態度が気に入らなかった。

矢崎美緒はベッドの横の靴を拾い上げ、安藤昭に投げつけた。「私が矢崎家のお嬢様じゃなくても、道家協会の会長の娘よ。あなたみたいな下賤な人間とは比べものにならないわ。黙りなさい!」