小林美登里は矢崎美緒に対して十分な愛情を注いできたと自負していた。
しかし、矢崎美緒はそんな彼女に対してこのような仕打ちで報いたのだ。あまりにも失望させられた。
小林美登里は憎しみに満ちた目で「必ず粟の仇を取ってやる。矢崎美緒を生きた心地がしないようにしてやる」と言った。
病室にいた兄弟たちは互いに顔を見合わせ、心の中で溜息をついた。
以前、母親に矢崎美緒を追い出すように言った時、彼女は頑として拒んだ。
今になって事が起き、矢崎美緒が実母とまだ連絡を取っていることが分かり、母親はようやく矢崎美緒への復讐を決意した。
やはり、母親自身が矢崎美緒の酷さを実感する必要があったのだ。
矢崎弘は我慢できずに「母さん、これは全部母さんが甘やかしたせいだよ。昔、僕たち四人が矢崎美緒と遊んでいた時、母さんは何度も矢崎美緒を愛しなさい、いじめてはいけないって言ってたじゃないか。今になってこんな報いを受けることになった」と言った。
矢崎美緒のような恩を仇で返すような人間は、他人の善意を利用して相手を踏みにじるだけだ。
結局のところ、矢崎美緒は愛情を受ける価値のない人間だった。
矢崎政氏も口を尖らせて「母さん、この憤りを晴らしたいなら自分の復讐をすればいい。でも粟を巻き込まないで。あの子は今幸せに暮らしているんだから、余計な重荷を背負わせる必要はない。それに、もしあの夢が本当なら、僕たち全員が矢崎美緒の共犯者だよ。僕たちだって人のことは言えない」と文句を言った。
だから、粟の仇を討つなんて言い方は可笑しい。
矢崎若菜も同意して頷いた。「矢崎政氏の言う通りだ。僕たちは共犯者なんだから、復讐するにしても粟を巻き込むべきじゃない」
粟のことを持ち出さなければ、彼らには復讐の理由がないとでも言うのか?
矢崎若菜一人を見ても、奪われた運気や体の怪我など、復讐の理由は山ほどある。
ここまで来て、矢崎若菜は冷笑を浮かべた。「僕は違う。自分の復讐をするつもりだ。矢崎美緒にはもう少し持ちこたえてもらいたいね。そうでないと面白くない」
以前は昔の情を思って復讐しなかったし、自分の怪我も治っていなかった。
今は骨もほぼ治ってきたし、心の中の憎しみもどんどん強くなってきた。当然矢崎美緒に復讐しなければならない。
これらの一つ一つの出来事、全て清算してやる。