夢の中で、彼らは全員矢崎美緒を選び、粟は銃撃されて死んでしまった。彼らは何で償えるというのか?
そう考えると、矢崎若菜は気が狂いそうになった。
矢崎若菜は泣きそうな顔で言った。「そう考えると、私たち本当に罪人ね。粟が私たちを嫌うのも無理はないわ。これじゃあ、もう粟と仲直りする機会なんて絶対にないわ…」
それが彼にとって最も辛いことだった。
矢崎弘は目を細めて、突然あることを思いついた。「夢の中で一つ不自然なことがあったんだ。誘拐犯が二人のうち一人を選べと言って、私たちが矢崎美緒を選んだら、本当に矢崎美緒を解放するのか?誘拐犯がそんなに言うことを聞くものなのか?」
そんなはずがない。
「私もおかしいと思う!」
矢崎政氏は頷いた。「あの誘拐犯は最後にあれだけの金を手に入れたのに、粟を撃ち殺して自殺を選んだ。あんなに大金を何に使うつもりだったんだ?動機は何だったんだ?もし本当に金持ちへの復讐が目的なら、矢崎美緒を殺すはずだ。」
矢崎美緒こそが彼らが最も救いたかった人物だった。
矢崎泰は笑って言った。「それは簡単だよ。誘拐犯は矢崎美緒が雇った人間さ。矢崎家の者が矢崎美緒を選べば彼女を解放し、粟を選べば矢崎美緒を人質に金を持って逃げる。どちらにしても問題ない。」
この言葉に、矢崎政氏、矢崎弘、矢崎若菜は一斉に矢崎泰を見た。
矢崎政氏は思わず拳を握りしめた。「なぜ気づかなかったんだ!そう考えれば全て辻褄が合う!」
つまり、全ては矢崎美緒が仕組んだことだった。
矢崎美緒は粟を消し去り、さらに粟と家族の間の絆を引き裂こうとしていた。
矢崎弘は怒りで顔を青くした。「さすが矢崎美緒のやり方だ。俺はあの誘拐犯が誰かに指示されているんじゃないかと思っていた。こう考えると、全て筋が通る。」
傍らの矢崎正宗も暗い表情で、深いため息をついた。
彼も辛かった。
彼らは夢の中の出来事を実際には経験していないが、粟は一度経験している。だから粟が彼らを全く信用しないのも無理はない。
矢崎正宗は慎重に考えた。もし自分がその場にいたら、おそらく粟を救うことを選んだだろう。
やはり粟は実の娘なのだから。
たとえ間接的に粟を死なせることはなかったとしても、小林美登里たちと比べても、彼も大差なかった。