829 大スクープ

掃除のおばさんが向かいのドアを開けた。

開けた瞬間、部屋から微かな助けを求める声が聞こえた。矢崎美緒の声のようだった。

記者たちがカメラを担いで次々と部屋に押し入った。「早く入れ!」

「撮れ!」

「大スクープだ!」

先に入った数人の男たちは目を輝かせ、カメラを手に矢崎美緒を狂ったように撮影し始めた。

椅子に縛られていた矢崎美緒は泣きながら叫んだ。「助けて!」

記者たちはカメラを止めることなく撮影し続け、最後は掃除のおばさんが矢崎美緒を救出したが、裸の姿を全て撮られてしまった。

矢崎美緒は泣き疲れて力が抜けていた。

記者たちは最後に掃除のおばさんが呼んだ警備員に追い出され、矢崎美緒は布団に隠れ、すっかり魂が抜けたようになっていた。

このスクープは、すぐに記者たちによって記事にされ、部屋に入った二人の男性についても詳しく書かれた。

烈狼と安藤昭の写真も。

ネットユーザーは皆、矢崎美緒が自ら刺激を求めて、この二人の男性を誘惑したと考えていた。

誰も矢崎美緒が被害者だとは思わなかった。

「今時の若者は本当に派手なことをするね」

「ふーん、矢崎美緒の髪も剃られちゃったのか。今回は本当に大胆だったね、すごいスクープだ」

「この記者たちすごいな、こんなのまで撮れるなんて」

「矢崎美緒はいっそAV女優に転向したらどう?」

「これが矢崎家のお嬢様?恥知らずね」

「写真は合成かと思ったけど、全部本物だったなんて。目が覚めた」

すぐに、矢崎メディアの社長である鈴木大翔もこの件を知った。事件は矢崎家の所属タレント安藤昭に関係していた。

ホテルの責任者も鈴木大翔に連絡し、矢崎美緒を引き取るよう依頼した。

そのため鈴木大翔はすぐに人を派遣し、矢崎美緒を病院に搬送して治療と検査を受けさせ、同時に安藤昭にも連絡を取ろうとしたが、彼の携帯電話はずっと通じなかった。

安藤昭はすでに空港に到着し、国境行きの飛行機に乗ろうとしていた。

ニュースをチェックすると、矢崎美緒が救出されたことを知った。「ふん、運がいいな。でもこれでいい、これからは矢崎美緒は人前に顔向けできなくなるだろう」

搭乗前、安藤昭は携帯電話の電源を切り、空港のゴミ箱に捨てた。

……

別荘で。

矢野朱里は夜のニュースを見て、驚きのあまり顎が外れそうになった。