856 野宿生活

外に出たものの、矢崎美緒はどこへ行けばいいのか分からなかった。

世界はこんなにも広いのに、彼女の居場所がどこにもないような気がした。ホテルに泊まるにしてもお金がない。

どうすればいいのだろう?路頭に迷うしかないのだろうか?

矢崎美緒は考えれば考えるほど悲しくなり、目が赤くなってきた。

小林美登里のところには絶対に戻れない。もし自分から行けば、殴られるかもしれない。

本田家の者のところにも行けない。

本田家の親戚たちは彼女の身から肉を一枚剥ぎ取りたいほど憎んでいる。

この二つのグループに見つからないように隠れなければならない。

矢崎美緒は長い間考えた末、彼女を助けてくれるかもしれない人を思いついた。それは小林博だった。

彼は従兄で、以前は彼女をとても可愛がってくれていた。

今こんな困った時だから、きっと助けてくれるはずだ。

そう思うと、矢崎美緒はすぐに携帯を取り出し、小林博に電話をかけ、彼の応答を待った。

その時、小林博は小林家の会社で、ビジネスレポートを見ていた。

彼の向かいには小林瑞貴が座っていた。

二人とも小林悠一に連れられて、会社の経営の仕方を学んでいた。

この期間、二人はたくさんのことを学んだ。

特に小林瑞貴は、以前の不真面目な態度を改め、非常に真剣に熱心に学び、ビジネスの学習においても多くの才能を見せていた。

多くの人が小林瑞貴に対する印象を改めた。

小林博は特に才能があるわけではないが、努力家ではあった。

電話を受けた時、オフィスには彼と小林瑞貴の二人しかいなかったので、小林博はすぐに電話に出て、「もしもし、何か用?」と尋ねた。

矢崎美緒はすぐに泣き声で言った。「従兄さん、会いたかった」

「うん」小林博は少し冷たく返事をした。

矢崎美緒は続けて言った。「従兄さん、私は今拘置所から出てきたばかりで、お金もないし住むところもないの。どこか住むところを探してくれない?後で仕事が見つかったら、引っ越すから」

仕事は口実に過ぎず、彼女はただ合理的に小林博に頼りたかっただけだった。

矢崎家で贅沢に育てられたお嬢様として、彼女は普通のサラリーマンになることなど考えたこともなかった。

仕事は疲れるし、嫌な思いもする。

そんなことはしたくない!