857 協議書の締結

一番重要なのは、小林美登里が彼女が甥と結婚したことを知ったら、もっと怒るだろうということだ。

矢崎美緒は再び吉野柔に電話をかけた。

彼女は口を開くなり、「柔、いとこのお兄さんって本当に優しいの。私が拘置所から出て住む場所がないって知って、わざわざお金を送ってくれたの。今はそのお金で一番いいホテルに泊まれるわ。本当に嬉しい」と言った。

吉野柔の心臓が一瞬止まりそうになった。

この二人がまた連絡を取り合うなんて、彼女は二人の関係を断ち切らなければならない。

吉野柔は言った。「こうしましょう。私の名義で空き家になっている家があるの。市の中心部じゃないけど、とてもいい家よ。三階建ての別荘なの。私たちは姉妹だから、あなたが住むなら安心だわ。そこに住んでみない?」

矢崎美緒は得意げな表情を浮かべた。