矢野朱里は吉野柔に同情はしなかったが、小林博のやり方には軽蔑を感じていた。
大の男が毎日あれこれと計算ばかりしている。
恥知らずで狡猾だ。
矢崎粟は言った。「この二人は望む者同士です。吉野柔のことをあまり同情する必要はありません。彼女は傲慢で横暴な性格で、小林博に婚約者がいる状況でも何度も告白し、家の権力を利用して気に入らない人を圧迫していました。」
「そうね、私も聞いたことがあるわ。学生時代に他人の彼氏を奪ったり、不良グループと付き合ったりして、付き合いづらい人だったって。」と矢野朱里は言った。
以前の矢野家の晩餐会で、吉野柔は矢野朱里を標的にしていた。矢野朱里が大人の対応をしなければ、二人は宴会で喧嘩になっていただろう。
「うん、福井家と吉野家はどちらも一人娘で、小林博も吉野柔の性格が原因で福井昭美との縁談を選んだの。今は福井家との結婚が上手くいかなくなったから、当然吉野柔に目をつけた。二人とも善人じゃないわ。」と矢崎粟はお菓子を一つ取りながら笑って言った。
小島一馬は首を振って言った。「家産のために自分の結婚を犠牲にするなんて、本当に必死だな。」
もし彼だったら、絶対にそんなことはしない。
愛していない女性と結婚するのは、とても苦しいことだ。
相手にも責任を持てない。
「そう考えると、この二人は意外と釣り合ってるわね。どうせ二人とも善人じゃないんだから、さっさと結婚すればいいのよ。他の人に迷惑をかけないで。」と矢野朱里は笑って言った。
小林博のような男が市場に出回ったら大変なことになる。
矢崎粟は微笑んで、「この三人、まだまだ戦いは続きますよ!」
「どんな戦い?」と矢野朱里は興奮して尋ねた。
矢崎粟は言った。「小林博は矢崎美緒を通じて吉野家と繋がろうとしていますが、矢崎美緒が彼に付きまとうことを考えていませんでした。今の矢崎美緒は何も持っていません。小林博に救われた以上、ただの他人のままでいられるはずがありません。矢崎美緒は必ず小林家に嫁ぎたいと思うでしょう。そうすれば奥様として暮らせますから。」
矢崎美緒が現れれば、吉野柔は必ず何としても彼女を追い払おうとするだろう。
小林博は吉野柔の味方をするだろうし、矢崎美緒は納得できずに、きっと何か策を弄するだろう。