矢野朱里は吉野柔に同情はしなかったが、小林博のやり方には軽蔑を感じていた。
大の男が毎日あれこれと計算ばかりしている。
恥知らずで狡猾だ。
矢崎粟は言った。「この二人は望む者同士です。吉野柔のことをあまり同情する必要はありません。彼女は傲慢で横暴な性格で、小林博に婚約者がいる状況でも何度も告白し、家の権力を利用して気に入らない人を圧迫していました。」
「そうね、私も聞いたことがあるわ。学生時代に他人の彼氏を奪ったり、不良グループと付き合ったりして、付き合いづらい人だったって。」と矢野朱里は言った。
以前の矢野家の晩餐会で、吉野柔は矢野朱里を標的にしていた。矢野朱里が大人の対応をしなければ、二人は宴会で喧嘩になっていただろう。
「うん、福井家と吉野家はどちらも一人娘で、小林博も吉野柔の性格が原因で福井昭美との縁談を選んだの。今は福井家との結婚が上手くいかなくなったから、当然吉野柔に目をつけた。二人とも善人じゃないわ。」と矢崎粟はお菓子を一つ取りながら笑って言った。