藤村慎一は南西部族の服を着て、髪を結い上げており、全体的に陰鬱な雰囲気を醸し出していた。
彼は矢崎粟を冷たく見つめ、「よくもここまで来たな。私の縄張りに来るとは、命が惜しくないのか?」
藤村慎一は情報網を持っていた。
南西地方全域に、スパイがいた。
以前から矢崎粟たちを監視させていたが、昼には南西地方に向かって飛行機で来たという情報が入った。
自ら確認に来てみると、案の定、あの忌々しい矢崎粟だった。
東京で起きた出来事は、彼の一生の恥辱であり、思い出したくもなかった。
「忘れたのか?誰が牢獄から救い出してやったのかを」矢崎粟は冷たく言い放った。
藤村慎一は冷笑して、「それがどうした?私を救ったのは、師匠の機嫌を損ねたくなかっただけだろう。私に対して善意なんてないじゃないか」