小林瑞貴は眉をひそめて、「嘘をつくのはやめなさい。私は全部聞いたわ。矢崎美緒の両親が矢崎粟を連れ去ったのよ。矢崎美緒は私たち小林家の敵だし、それに、矢崎美緒には不運がついているのに、あなたはまだ彼女に関わろうとするなんて、本当に大胆ね」
小林博は笑って言った。「小林家はもう叔母さんと縁を切ったじゃないか。矢崎美緒の両親は矢崎家の敵であって、私たち小林家とは何の関係もない。それに、私たちは矢崎美緒とこれまで付き合ってきたんだから、彼女を刑務所に入れるのを見過ごすわけにはいかないだろう?」
彼はただ吉野家を手に入れたいだけだった。
しかし小林博は本心を明かすことはなかった。彼はそれほど愚かではなかった。
小林瑞貴は目を転がして、呆れて言った。「まあ、好きにすればいい。もし何か問題が起きても、従兄として警告しなかったとは言わせないよ」
矢崎美緒のような人物と関わると、必ず泥沼に引きずり込まれる。
小林博は気にする様子もなく、「何が起こるというんだ?矢崎美緒は今や頼る人もいない人間だ。彼女に何ができるというんだ?」
彼は状況をコントロールできる自信があった。
小林瑞貴は首を振り、諦めた表情で言った。「矢崎美緒を甘く見すぎるな。彼女の父親は道家協会の首席だぞ。矢崎美緒も何か邪術を使えるかもしれない。彼女に関わったら、きっと厄介なことになるぞ」
小林博は笑い出した。「安心してくれ。矢崎美緒にこれ以上付きまとわせはしない。彼女を去らせる方法は私にある。この件は内密にしておいてほしい」
「分かった、誰にも言わないよ」小林瑞貴はそう言うと、書類を持って出て行った。
彼は小林家の発展に専念することにした。
同時に、小林瑞貴は少し期待もしていた。矢崎美緒は小林博にどう対抗するのだろうか?
ソファに座った小林博は、軽蔑的に笑った。「小林瑞貴は取り越し苦労をしているだけだ。たった一度呪いの毒にかかっただけで、性格まで変わってしまって、ますます臆病になって、少しも度胸がない」
小林瑞貴が長男でなければ、小林家は誰の手に渡るか分からなかった。
自分は生まれだけで負けたのだ。
彼にも分かっていた。小林おじい様と小林おばあ様も小林家を小林瑞貴に譲るつもりだったのだ。だから彼は口出しするのをやめた。嫌われるのは避けたかった。
……