873 スパイがいる

矢崎粟は穀物の中から飛び出した。

彼女は森村辰雄に向かって、目に殺気を宿して進んだ。

一瞬後、彼女の剣が森村辰雄の首に横たわっていた。

「森村、最後のチャンスを与えよう。この二つの武器は誰から貰ったのか、正直に話せば寛大に処置する」と矢崎粟は言った。

森村辰雄は目を閉じ、「殺すなり何なり好きにしろ、私は話さない」と言った。

彼は誓いを裏切ることはできなかった。

矢崎粟は笑みを浮かべ、「奥さんと娘さんが中華街にいると聞いたけど」

この情報は、彼女が偶然耳にしたものだった。

森村辰雄は目を見開き、怒りの目で矢崎粟を睨みつけた。「彼女たちには関係ない。私に向かってこい。さもなければ、死んでも許さないぞ」

彼の娘はまだ五歳だった。

幼稚園に通い始めたばかりで、こんなことに耐えられるはずがない。