863 血の匂い

矢崎粟は彼の頬をつついて、「そうね、最近時間があれば会いに来てるわ。前より痩せたわね。ちゃんと食事してる?」

「うん、赤ちゃん肌が取れたんだ」澄夫は笑顔で答えた。

二人が話し終わると、澄夫は大人しく両親の元に戻り、時々矢崎粟の方を見つめ、期待に満ちた眼差しを向けていた。

矢崎粟は澄夫の体から血の匂いを感じ取った。

その匂いは、まるで死体の山の中にいたかのような匂いだった。

山本風尾は矢崎粟に微笑んで、「矢崎さんはテレビで見るより綺麗ですね」と言った。

矢崎粟も礼儀正しく返した。「山本族長も若くして優秀ですね」

数人が丁寧に会話を交わした。

午前9時になり、一行はオークションに向かった。

オークションに向かう前に、山本族長は三人に適切な仮面を選んでくれた。

このオークションでは、全員が仮面を着用しなければならなかった。

ホールに入ると、すでに多くの人々が待っていた。

その時、藤田川の仮面が外れてしまった。

その端正で清らかな容姿が人々の目に触れ、多くの驚嘆の声が上がった。

「かっこよすぎる」

「まるで古風なイケメンね」

「こんなにかっこいい、どこの家の若様なの?」

「きゃー!」

「山本風尾よりもかっこいいなんて」

その時、女性用の仮面をつけた人物が大股で近づき、藤田川に向かって傲慢に言った。「あなたはどこの家の人?うちに婿に来なさい。これからは贅沢な暮らしをさせてあげるわ」

藤田川はゆっくりと仮面を付け直し、何も言わなかった。

その女性が手を伸ばし、仮面を剥ごうとした。

しかし次の瞬間、彼女は全身が固まり、動けなくなった。

彼女は口を大きく開け、藤田川に向かって言った。「早く私を解放しなさい。私が誰だか分かってるの?解放しないと、父上に南西部族の人々を皆殺しにさせるわよ」

女性は傲慢に言い、目には悪意が宿っていた。

「日和姫様!」一人の老人が出てきて、急いで尋ねた。「大丈夫でございますか?お怪我はありませんか?」

日和は横柄な表情で、「早くこの人に解かせなさい。私は邪術で動けなくなってるのよ」

老人は藤田川に向かって怒りを込めて言った。「若様、早く我が姫様にかけた邪術を解くことをお勧めします。さもなければ、我が碧海国はあなたを許しませんぞ」

この言葉に、周りの人々は議論を始めた。