883 引き裂く

矢崎美緒が別荘に戻ってきても、どうしても心が落ち着かなかった。

あの吉野柔は雌虎のようなのに、なぜ小林博兄さんは彼女を選んだのだろう?

矢崎美緒は自分が劣っているとは思わなかった。

見た目が少し老けて見えること以外は、性格は吉野柔より良く、小林博とも深い付き合いがあった。

彼女は何とかして、この二人を引き離そうと考えた。

矢崎美緒はしばらく考えた末、小林美登里と吉野柔の母親である安藤礼が宿敵同士だということを思い出した。もしこの二人が結婚することになれば、小林美登里が真っ先に反対するに違いない。

安藤礼も同意しないだろう。

以前、安藤礼はよく小林美登里の恥ずかしい話を令夫人たちの間で話題にしていた。

小林家の二人の嫁は小林美登里の味方をするので、田中千佳と安藤礼の関係もあまり良くなかった。

そうなると、矢崎美緒はこの三人の関係を利用して、大きな策を練ることができる。

その夜、矢崎美緒は友人に頼んで、吉野柔と小林博が甘い時間を過ごしているところをたくさん撮影してもらった。

その友人は矢崎美緒が二人のプロポーズビデオを作ろうとしているのだと思い、承諾した。

翌日の夜。

矢崎美緒は写真を手に入れた。

彼女は他人のメールアドレスを使って、これらの写真を全て小林美登里、田中千佳、安藤礼の三人に送った。

案の定、田中千佳は写真を見るなり、すぐに小林博を呼び戻した。

彼女は怒って言った。「息子、お母さんに正直に言いなさい。あなた、吉野柔というあの雌虎と付き合っているの?」

吉野柔は社交界で有名な気の強いお嬢様だった。

もし小林家に嫁いできたら、小林家の平和な日々は終わりを迎えることになるだろう。

小林博は気にも留めずに言った。「そうだよ、どうかしたの?」

「どうかしたって!恋愛するなら母さんに一言も言わないの?吉野柔はあんなに気が強いのに、母さんが彼女と上手くやっていけると思う?」田中千佳は肝が煮えくり返るほど怒り、小林博を睨みつけた。

小林博は言った。「母さん、安心して。僕が吉野柔を従順にさせるから、母さんは幸せに暮らすことだけ考えていればいいよ。」

彼は吉野家の財産だけが欲しかった。

吉野柔がどんな性格でも関係なかった。