882 愛人

当初、矢崎美緒が多くの男性と一夜を共にしたという噂が広まった時、彼は矢崎美緒の男たちの一人になることを夢見ていた。

そして、ついにその機会が訪れた。

川上武石は蛇のように、矢崎美緒の周りをうろつき、彼女の追い払いなど全く気にしなかった。

彼はにこにこと笑いながら言った。「今日お会いして、矢崎さんは本当に美しいですね。以前大スターだったのも納得です！」

矢崎美緒は嘲笑うように笑った。「私はもうとっくにスターじゃないわ。」

この男の言葉は、彼女の耳に心地よかった。

川上武石は近寄って、「僕の愛人になってくれたら、もう一度芸能界に復帰させてあげますよ。どうですか？」

彼の家にも芸能事務所があった。

矢崎美緒は彼を上から下まで見渡して、「どこの事務所？」

「川上武石です。うちは川上メディアです。」川上武石は自信満々に言った。

矢崎美緒は思わず嘲笑った。「三流の会社じゃない。あなたの会社は一人もスターを輩出していないわ。全員コメディアンばかりじゃない。冗談はやめて。」

やはり信用できない男だった。

それに、今の彼女はこんなに老けてしまって、どうやってスターになれるというの？

川上武石は首を振った。「そうとは限りませんよ。うちの会社は他のメディア会社と提携していて、あなたに実力さえあれば、他の会社でデビューさせることもできます。方法はいくらでもありますよ！」

この口上は、業界の大物から学んだものだった。

目的は女優たちと一夜を過ごし、寝た後はさっさと逃げ出すことだった。

矢崎美緒は白い目で彼を見た。「他の人を騙せばいいわ。私はそんな手に引っかからないわ。」

彼女はグラスを持って、別の場所に座りに行った。

芸能界に入る前、兄の矢崎弘はこの手の口上が女優を騙すためのものだと警告していた。

突然、四人の兄たちが恋しくなった。

以前は、四人の兄たちは本当に優しかった。彼らの持ち物なら、彼女が気に入れば何でも自由に持っていけた。

今では全く付き合いがない。

矢崎美緒は心の中で辛かった。

彼女はさらに酒を飲み、最後には個室で意識を失うほど酔っ払ってしまった。

吉野柔と小林博はすでに帰っていた。

矢崎美緒が酔い潰れているのを見て、川上武石は嬉しそうに笑い、彼女を担ぎ上げて外に向かった。