第489話 こんな偶然?

鐘清の目には、どんな医術も自分の意見ほど重要ではないと思われているようだ。

今になってやっと分かった。この女性がいい大学を出ているのに仕事もないのは、大学に問題があるのではなく、彼女自身の性格に問題があるのだと。この診療所でこんな発言ができるなら、以前の実習でも同じようなことをしていたに違いない!

景雲昭は知らなかったが、彼女の推測は的中していた。

鐘清が卒業実習をしていた年、寧市のある大病院で、彼女は意気込みと幻想に満ち溢れ、自分は人命を救う天使だと思い込み、どんな状況でも突っ走っていた。

彼女にとって、血を怖がりながらもそれを無視して人を救うことは、とても勇敢な行為だと思っていた。しかし実際には、無謀さ以外に何も持ち合わせていなかった。

医師が大量の薬を使用するのを見ると、患者の状態を考えもせず、危険だと思い込んで、即座に患者を守りに行き、医師を非難した。また、お金がなくて手術を受けられない人を見ると、院長室まで走っていって罵倒し、院長には医の倫理がなく、金しか見ていないと言い放った。

実際のところ、すべての人が無償で尽くす必要はないのだ。

一回の手術に必要な機器、血液、消耗品、そして医師や看護師たちの献身的な努力、不眠不休の働き。彼女が料金を取るなと言えば、本当に取らなくていいというものだろうか?

もし全てが彼女の考え方通りに運営されていたら、病院はとっくに混乱状態か完全に倒産していただろう。そうなれば誰も救えず、誰も生きていけない。

それに、本当に人を助けたいのなら、もっと多くの方法があるはずなのに、彼女は最も愚かな方法を選んでしまった。

良く言えば優しさだが、悪く言えば、自分を聖母様だと思い込んでいる馬鹿で、毎日宇宙の中心で愛を叫びながら、実際の行動は何一つ取れない人間だった。

この時、景雲昭にそう叱られ、鐘清の小さな顔が少し引きつった。

「妹さん、また貴女なの?どうして私と対立しようとするの?私は貴女に悪いことなんて何もしていないのに。それに、あの時貴女があの嫌な男に強要されていた時、私は助けようとしたのに、どうして私を責めるの?!」鐘清は非常に委屈そうだった。

景雲昭の口角が引きつった。

馬の耳に念仏だ。

「お姉さん、彼女と知り合いなの?」蘇楚は景雲昭に尋ねた。