第583章 1分も要らない

甘堇辰と蘇楚は落胆した表情で、蕭海清と景雲昭が去っていくのを見て、長居もせずに鍵をかけて帰宅した。

ただし、家に帰っても落ち着かない様子だった。

その頃、景雲昭と蕭海清はすでに道中にいた。

蕭道安が運転し、二人は後部座席に座り、江蓉は助手席に座っていた。

江蓉はまだ三十歳にもならず、肌は依然として若々しく美しく、この日は淡い青色のワンピースを着て、長い髪を結い上げ、眉は穏やかで、賢淑で優しげな印象を与えていた。その目は時折蕭海清を見つめ、何か言いたげな様子だった。

先ほど玄関で、江蓉は景雲昭に蹴られたばかりだった。その一蹴りは軽いものではなかったが、今の江蓉は何事もなかったかのように振る舞い、よく我慢できているものだった。

「海清、少しの間我慢してちょうだい。お父さんはこれまでずっとあなたのために一生懸命頑張ってきたのよ。今、お父さんがあなたの助けを必要としているときに、足を引っ張るわけにはいかないでしょう。過去のことは私の非だったわ。今回お父さんを助けてくれれば、あなたの言うことは何でも聞くわ。たとえ将来、蕭家の全財産をあなたが欲しいと言っても、私と俊俊は全部譲るわ、一銭も要らないから……」江蓉は誠意を込めた表情で言った。