第610章 藪医者

甘旦那さんは言い終わると、ため息をついた。

彼は一生をかけて病気を治し、人々を救ってきた。助けられなかった患者もいたが、それは彼のミスではなく、病状自体が深刻だったからだ。

このような医療ミスは若い頃にしか起こらなかったし、それも誰かの死につながることはなかったのに!

旦那さんは暗い表情を浮かべ、景雲昭は少し考えてから尋ねた。「おじいちゃん、亡くなったその老人は、薬を取りに来た時の様子はどうでしたか?普段と何か違うところはありましたか?」

川のそばを歩けば靴が濡れるように、医療ミスの可能性も否定できない。しかし、通常のミスなら原因が分かるはずで、理由もなく人を死なせることはないはずだ。

「あのお兄さんはね...」旦那さんは思い出しながら続けた。「普段と変わらなかったよ。よく来る人だから、時々話もするんだが、機嫌がいい時は長居しない。ここは診療所だから、他の患者の病気がうつるのを心配してたのかもしれない。でも、気分が悪い時は静かな場所を見つけて座り込む。その日は他に誰もいなくて、脈を診た後も何度も診てくれと言って、胸が苦しいとか、足が具合悪いとか言って、なかなか帰ろうとしなかった...」

「暇だったから、家に帰りたくないのかと聞いてみたんだが、直接は答えずに、逆に私に子供たちは親孝行かって聞いてきた...」

旦那さんはため息をつき、亡くなったお兄さんも子供たちとの関係があまりよくなかったのだろうと察していた。

相手も自分と同じ老人で、年は少し上だった。いつも独特な匂いを漂わせ、二三日おきに来ていたが、服は一ヶ月経っても着替えることはほとんどなく、何年も着ている古い服は穴が開いていた。時々息子の話をするのを聞かなければ、身寄りのない人だと思っていたかもしれない。

しかし、そのお兄さんはお金に困っている様子はなく、毎回診療費を払っていた。この診療所は料金も安く、薬材もそれほど高くないのに、受け取りを断っても、相手は必ず支払おうとし、手元に置いても仕方がないと言っていた。

景雲昭は話を聞きながら、ガラス戸越しに外で怒り狂って泣き叫ぶ男を再び見やった。

「雲昭や、わざわざ来てくれてありがとう。でも、この件はお金を出さないと解決できないと思うから、あの若い人を中に呼んで、いくらが適当か相談してみようと思う」と旦那さんは言った。