第609章 人を治療死させた

「雲昭、電話が繋がらなかったから、直接来たんだけど、お爺さんが大変なことになってしまって、人を治療して死なせてしまったらしいんだ……」甘堇辰は景雲昭を門の外に引っ張り出して、急いで話した。

景雲昭は驚いて「どういうことなの?」

甘祖父は神医とまでは言えないものの、ほとんどの病気を治すことができ、治せない場合でも症状を和らげることはできたのに、どうして人を死なせてしまうことがあるのだろうか?

「実は私もよく分からないんだ。診療所の人から連絡があっただけで、ただ患者さんはかなりの高齢で、体調があまり良くなかったって。ずっとお爺さんに診てもらっていたんだけど、今朝お爺さんが薬を出した後、夜になって家族が診療所の前に運んできて、お爺さんが治療して死なせたって言ってるんだ」と甘堇辰は続けた。

景雲昭はそれを聞くと、すぐに振り返って徐おじいさまに一言告げた。

徐お爺さんは付き合いづらそうに見えたが、彼女の私事には一切口を出さず、ただ鼻を鳴らして手を振り、彼女を追い払った。

そして直ちに甘堇辰と一緒に甘祖父の診療所へ向かった。

何嘉思からの電話が絶え間なかったため、彼女の携帯電話はいつもマナーモードにしていて、そのために甘堇辰からの電話に気付かなかったのだ。

しばらくすると、二人は現場に到着した。

診療所の前は騒然としており、喪服を着た男女が地面に跪いて泣き叫んでいて、多くの人々が見物に集まっていた。

景雲昭は急いで近づいていき、地面に置かれた担架の上に横たわる老人を見た。その顔は硬直し、動かず、呼吸もなく、確かに亡くなっていた。

甘祖父は診療所の中にいて、明らかにこのような状況は初めてで、眉をひそめながら治療記録を確認し、深刻な表情をしていた。

「あんたたちは甘松柏の孫なんだろう?早く出てこさせろ!」二人が入ろうとした時、その男が叫んだ。さらに「インチキ医者が人を殺した!私の父親からたくさんの金を騙し取っただけでなく、命まで奪いやがって!」と怒鳴った。

景雲昭は眉をひそめ、その男を一瞥した。

男は四十歳くらいで、激しく泣いているように見えたが、雷は鳴るのに雨は降らないといった具合で、涙一滴も見えなかった。