「朝早く私に紅包を送ってくれたじゃない?」
「紅包も贈るし、プレゼントも贈らないと」坂本真理子は手を伸ばして彼女の頭を撫でながら言った。「他の人が持っているものは、うちの加奈は必ず持っていなきゃいけないし、しかも倍にしないとね!」
「ありがとう、お兄ちゃん」坂本加奈は遠慮なくベルベットのケースを受け取り、開けてみると雪の結晶の形をしたダイヤモンドのピアスが入っていて、とても精巧な作りだった。
黒川浩二の視線が坂本加奈の頭に置かれた大きな手に落ち、瞳の色が気付かれないように暗くなった。
佐藤薫は横でため息をつきながら、「坂本真理子、あなたは旦那さんがすべきことを全部やっちゃってるわね。加奈の旦那さんに何が残るの?」
坂本加奈は佐藤薫を睨みつけ、小声で呟いた。「蘭、そんなこと言わないで」
「彼が何をしようと私の知ったことじゃない!」坂本真理子は黒川浩二の方をちらりと見て、ベルベットケースを取り戻し、ピアスを取り出して慎重に彼女の耳に付けてあげた。
「うちの加奈はやっぱり可愛いね」
坂本加奈はピアスに触れながら、目を細めて笑った。「ありがとう、お兄ちゃん」
明らかに兄妹の仲睦まじい雰囲気なのに、他の人々は皆驚いた表情を浮かべていた。坂本加奈が結婚式で捨てられ、新郎を変更したという話を聞いていたが、面子を保つために適当な男性を連れてきただけだと思っていたのに、まさか本当だったとは!!!
しかも、この男性は本当に芸能人じゃないの?イケメンすぎるじゃない!!
黒川浩二は周りの人々の複雑で探るような視線に対して、端正な顔立ちに感情の動きを見せることなく、彼らの観察や推測を受け入れていた。
ポケットの携帯電話が突然振動し始め、彼は画面をちらりと見て、坂本加奈に言った。「電話を取ってくる」
坂本加奈は頷き、彼が個室を出て行く背中を見送りながら、振り返って佐藤薫の腕をつねった。「また変なこと言ったら絶交よ」
佐藤薫は両手を挙げて降参した。「はいはい、もう言わない。誕生日の子、プレゼントを見てみましょう」
その場にいた金持ちの二世たちは坂本加奈とそれほど親しくなかったが、坂本真理子と佐藤薫のことを考えると手ぶらでは来られず、皆プレゼントを持ってきていた。