第177話:彼だ

坂本加奈は憂鬱な表情を浮かべ、自分が普段から頼りなく見えるのか、それとも岩崎が純粋すぎるのかと考えていた。

どうして彼女は自分が前の恋に未練があると思うのだろう?

しかも、最初から間違った選択だったのに!

佐藤薫は彼女の小さな顔がしわくちゃになっているのを見て、笑いを止め、説明した。「安心して、あなたの義理の妹はもう早くに正しい道を選んだわ」

林翔平は闇で、黒川浩二は光だった。

黒川詩織はようやく安心し、熱心に尋ねた。「じゃあ、彼が彼女を訪ねてきた理由は?」

「他に何があるというの?」佐藤薫は嘲笑うように言った。「あのクズな妹のために頼みに来ただけよ」

「あの林波留って最低よね。まだ彼のために頼むの?」黒川詩織は嫌悪感を露わにした。「同じ穴の狢ね」

坂本加奈は唇を噛んで説明しようとしたが、岩崎が誤解して浩二の耳に入ったら、また彼が嫉妬するのではと心配になった。