第276話:私はまだ老いているのか

墨都の天気は日に日に寒くなり、朝起きてカーテンを開けると、寂しげな木の枝に薄い雪が浮かんでいるのが見えた。

最近、中谷陸人は幼稚園の送り迎えを執事に任せている。幼稚園はもうすぐ休みになるが、その時は一日中家にいて退屈するだろう。

坂本加奈が階下に降りると、黒川浩二と中谷陸人は既にダイニングテーブルに座っていた。一人はコーヒーを飲みながら新聞を読み、もう一人はゆっくりとミルクを飲んでいて、その光景は何となく調和が取れていた。

「ママ、おはよう」中谷陸人は目を輝かせながら、真っ先に彼女を見つけ、澄んだ声で挨拶した。

黒川浩二もすぐに顔を上げ、「おはよう」と言った。

「浩二さん、おはよう。陸人くん、おはよう」坂本加奈は軽やかな足取りでダイニングテーブルに向かった。

「ママは偏り過ぎ。僕が先に挨拶したのに」小さな子供は嫉妬して抗議した。