「サプライズをあげたかっただけなのに」黒川詩織は口を尖らせて反論した。
黒川浩二は何も言わず、彼女から森口花へと視線を移した。
森口花は謙虚に挨拶をした。「黒川社長、加奈さん」
「まだ社長って呼ぶの?」黒川詩織は顔を上げて彼を睨んだ。「お兄さんって呼ぶべきでしょ」
森口花は彼女を見下ろして笑った。「随分と急いでるね!」
「良い知らせはお兄さんと義姉さんに早く伝えたいの」黒川詩織は甘えるように言った。
森口花は愛おしそうに彼女の頭を撫でた。
黒川浩二の瞳が一瞬暗くなり、彼らが何を言おうとしているのか既に分かっているようだった。
坂本加奈は状況が飲み込めず、無邪気に尋ねた。「どんな良い知らせを私たちに伝えたいの?」
黒川詩織の頬が赤く染まり、森口花を見てから、ポケットから小さな手帳を取り出した。「私、結婚したの」