「リハビリは辛すぎて、諦めたいと思ったの。でも彼は私が一生車椅子に座っているのを見たくないから、だから私にプロポーズしてくれたの!」
坂本加奈は、誰かが苦しみの渦に沈んで抜け出せないとき、手を差し伸べてくれる人がいれば、誰も断ることはできないと理解していた。
ましてやその人が黒川詩織の大好きな森口花だったのだから。
「先輩のことが好きなのは分かるけど、浩二にも彼なりの心配や懸念があるのよ」坂本加奈は手を伸ばして彼女の乱れた髪を整えながら言った。「彼のことも理解してあげて。何をするにしても、全て詩織のことを思ってのことなのだから」
黒川詩織は彼女の澄んだ瞳を見上げ、唇を噛みながらゆっくりと頷いた。
約30分後、書斎のドアが開いた。
「森口花」黒川詩織は真っ先に出てきた森口花を見つめた。