黒川浩二は約束通り、二回戦目から連勝を重ね、黒川詩織と森口花がどんなに協力して阻止しようとしても、最終的には彼が勝利を収めた。
傍らにいた坂本加奈は、目に尊敬の念を浮かべながら、「浩二さん、すごいですね!私もあなたみたいに強くなれたらいいのに」と言った。
黒川浩二は集めたお金を全て彼女に渡しながら、「一つの家に一人強い人がいれば十分だよ」と言った。
坂本加奈はそれもそうだと思い、嬉しそうにお金を数え始めた。
黒川詩織は羨ましそうな表情を浮かべながら、兄があまりにも義理の妹を甘やかしすぎていると感じていた。
義理の妹を喜ばせるために、一銭も残さなかったのだ。
森口花は黒川詩織に水を一杯注ぎながら慰めた。「大丈夫よ、私が麻雀の腕を磨いて、来年は兄さんを完膚なきまでに打ち負かしてみせるわ」
黒川詩織は頷いて同意した。
***
旧正月二日、黒川浩二は用意した年始の挨拶の品を持って義理の両親の家に新年の挨拶に行った。
その後数日間は義理の両親の家に滞在し、五日になってようやく黒川家に用事があると言って戻ることにした。
坂本加奈も一緒に行くつもりだったが、黒川浩二は彼女に義理の両親と過ごす時間を多く持つように言い、加奈は少し迷った末に断らなかった。
今は月見荘に住んでいて、普段は学校に通い、休みは浩二と過ごすため、両親と過ごす時間が確かに少なかった。
今回帰ってきて、父の髪の白髪が増えているように見えた。後で兄に良く言い聞かせなければ、いつも父を怒らせないようにと。
坂本真理子はそういう説教じみた話は好きではなかったが、実の妹が言うことなので、適当に頷いて了承し、すぐに遊びに出かける口実を見つけて逃げ出した。
坂本加奈は朝早く起きて、ベッドに伏せってスマートフォンを見ていたが、見ているうちに瞼が重くなってきた。
スマートフォンは音もなくベッドの上に落ち、彼女は枕に顔を埋めたまま眠りについた。
上野美里は彼女を誘って散歩に行こうと思っていたが、ドアの所で眠っている様子を見て、仕方なく首を振った。
そっと部屋に入って布団をかけてやり、慎重にドアを閉めて出て行った。
坂本健司は彼女一人なのを見て、不思議そうに「加奈は?私たちと一緒に...」と聞いた。
「シーッ」上野美里は静かにするよう合図をし、小声で「寝ているの」と言った。