第356章:私の手の血

坂本加奈は黒川浩二の隣に座り、彼の手に自分の手を重ねた。触れることはできないけれど。

「しろちゃん、彼らの言うことを聞かないで。あれはあなたがやったことじゃない。あなたは素晴らしい子よ、本当に素晴らしい。」

黒川浩二は彼女の言葉を聞いたかのように、隣の席の方を向いた。

坂本加奈の心臓が激しく震え、本当に彼と目が合ったような錯覚を覚えた。

白川櫻は部屋を一瞥すると、黒川浩二が隣の席を見ているのに気づいた。まるでそこに誰かが座っているかのように。

突然、背筋が凍るような不気味さを感じた。

「早く医者に連れて行った方がいいわ。」

***

黒川徹は黒川浩二を精神科医と心理カウンセラーに診せた。

医者が何を聞いても、彼は黙ったまま、誰にも反応を示さなかった。

医者は黒川徹の説明を聞いた後、最終的に黒川浩二に「反社会性人格障害」と診断を下した。

黒川浩二はまだ他の生命を虐待する行為を示していないため、長期的な心理療法とカウンセリングを勧められただけだった。

白川櫻は黒川浩二が反社会性人格障害だと知っても驚かず、黒川徹に彼を施設に送るよう強く要求した。次は美月を傷つける可能性があるからだ。

黒川徹は断固として反対した。彼にとって黒川浩二は普段から他の子供より内向的で活発でないだけで、実の息子を見捨てることはできなかった。

そのため、白川櫻は黒川徹と大喧嘩になり、怒って黒川美月を連れて出て行くと言い出した。

しかし黒川美月は断固として家を出ることを拒否し、白川櫻が用意した荷物も元に戻すしかなかった。

だが白川櫻の態度は強硬で、黒川美月を黒川浩二に近づけさせず、SPAも中止し、毎日家で娘を見張っていた。

屋敷の使用人たちは口には出さなかったものの、黒川浩二を見る目には同情と恐れが混ざり、以前のような愛情と好意は消えていた。

そして、この騒動の元凶となった使用人は屋敷で働き続け、静かに黙々と、まるで何事もなかったかのように過ごしていた。

黒川浩二はこの家で異質な存在となり、誰も彼と話そうとせず、誰も近づこうとしない。彼も誰とも話さず、いつも部屋に閉じこもっていた。

本を読み、勉強し、飛行機の模型で遊ぶ。

坂本加奈は毎日彼から離れることなく寄り添い、彼の輝いていた目が日に日に曇っていくのを見て、心を痛め、限りない憎しみも湧いてきた。