第357話:家族じゃないの?

黒川浩二は黒川美月の言葉を心に留めず、学校の行き帰り以外は自分の部屋に閉じこもり、夕食も一緒に食べなくなった。

あっという間に真冬となり、目覚めると窗の外の景色はより一層枯れ果てたように見え、夕暮れのフィルターがかかったようだった。

週末、黒川浩二は一日中部屋にいることができた。

白川櫻と黒川徹は時々喧嘩をし、時には黒川美月を叱る声も聞こえてきた。

要するに黒川美月がピアノの練習をしない、ダンスの練習をしたがらないということだった。

黒川浩二は外の音を気にせず、この小さな部屋に自分を閉じ込めていた。

そうすれば、白川櫻の冷たさや、彼らの喧嘩、他人の異様な視線に悲しむことはないと思った。

午後、ドアの外から再び白川櫻と黒川美月の喧嘩が聞こえてきた。

今日、黒川美月にはバレエのコンクールがあったが、彼女はわざとバレエシューズを壊し、舞台に立ちたくないと言った。

白川櫻は彼女のそんな小細工を見抜き、懇々と諭したが効果なく、ついに怒り出した。

黒川美月は勇気を振り絞って、バレエが嫌い、ピアノも嫌い、バレリーナになんてなりたくない、警察官になって悪い人を捕まえたいと言った。

白川櫻は激怒して彼女の頬を平手打ちした。

黒川美月は泣きながら部屋に逃げ込み、白川櫻がドアを叩いても応答せず、仕方なく使用人に果物と水を届けさせた。

しばらくすると、黒川浩二の窓を何かが叩く音がした。

黒川浩二が顔を上げると、窓の外に手が伸びているのが見えた。一瞬驚いたが、すぐに窓を開けると、黒川美月が壁の隙間に足をかけ、宙づりになっているのが見えた。

「美月、何をしているんだ?気が狂ったのか?」

黒川美月は目を真っ赤に泣き腫らし、ウサギのように可哀想な様子で、すすり泣きながら言った。「お兄ちゃん、私たち、逃げましょう。もうここにいたくない……本当に辛いの……毎日毎日辛くて。」

黒川浩二は焦りながら彼女に手を伸ばした。「もういい、早く来て!」

黒川美月は壁の隙間にしがみつきながら、泣きながら言った。「両親が喧嘩するのも、離婚するのも嫌。でも一番嫌なのは、お兄ちゃんに会えないこと。