「片付けは私が……」
西村雄一郎が茶碗を台の上に置こうとしたが、うまく置けなかった……
「ガチャン!」
坂本加奈は割れる音を聞いて注意しようとしたが間に合わず、怨めしそうな目で彼を見つめた。
「私の茶碗は全部で2つしかないのに、全部割っちゃったじゃない!!!」
今夜は鍋で直接ご飯を食べなきゃいけないの?
「割れたものは割れたんだ。倍にして返すよ」西村雄一郎は気にも留めず言い、横の箒を取って床の破片を掃こうとした。
坂本加奈は小声で呟いた。「西村家は破産したのに、お金あるの?」
西村雄一郎の動きが止まり、暗い目で見上げた。「君も俺が西村家を出たら生きていけないと思ってるのか?俺をただのダメな坊ちゃんだと思ってるんだろう?」
坂本加奈は我に返り、慌てて首を振った。「そういう意味じゃなくて、私は……」
「バン!」西村雄一郎は箒を床に叩きつけ、破片の上を踏んで出て行った。
坂本加奈は彼の足から血が流れているのを見て、心配そうに声をかけた。「雄一郎さん、足が……」
西村雄一郎は聞こえなかったかのように、彼女の傍を通り過ぎ、一瞬の躊躇もなくドアを勢いよく閉めて出て行った。
坂本加奈は驚いた心臓を押さえながら、彼は躁病でもあるんじゃないかと真剣に疑った!
キッチンの後片付けを終え、本当は少し休もうと思ったが、今食器を買いに行かなければ、夜は本当に鍋で直接食べることになってしまう。
財布と携帯を持ってドアを開けようとした時、ドアを開けると西村雄一郎が袋を持って立っているのが見えた。
西村雄一郎も彼女を見て一瞬驚き、気まずそうな表情で袋を下駄箱の上に置くと、すぐに立ち去ろうとした。
「待って」坂本加奈は彼を呼び止め、もう怒ったりする気もなく、彼の足に視線を落とした。「怪我の手当はしたの?」
西村雄一郎は背を向けたまま、冷たく言った。「構うな!!」
そう言うと、大股で歩いて行ってしまった。
必死に隠そうとしていたが、坂本加奈には彼の歩き方がいつもと違うことが分かった。
しかし、この人は頑固で一言でも気に入らないことがあれば突っかかってくるので、坂本加奈も呼び止める勇気がなかった。それに、こんな大人なのだから、怪我をしたら包帯を巻くくらいの分別はあるはず!!
彼女はドアを閉め、袋を持ってダイニングテーブルまで行って中を見た。