第404章:太陽を隠す(3)

佐藤薫と深木雫は「はい」と言おうとしたが、男の鋭い眼差しに会い、黙って言葉を飲み込んだ。

「付き添いの方が良ければ、それでも構いませんよ!」

黒川浩二は自分の付添人二人の方を振り向いた。

中谷仁は壁に寄りかかり、骨ばった指で眼鏡を軽く押し上げ、微笑んで言った。「どうせ犬の方が私よりイケメンだし、こういうことは犬にやらせましょう」

家の小悪魔には手を焼いているが、黒川浩二たちには対抗できないということだ。

薄田正はすぐに首を振った。「私は無理です。これは本当に無理!」

黒川浩二は坂本真理子の方を見た。

今日彼は白いスーツを着て、胸には鶴の刺繍があり、髪は丁寧にセットされ、とてもかっこよかった。

「何を見てんだよ!今日の私は花嫁側の人間で、あなたの付添人じゃないわよ!!」

黒川浩二を手伝うより、彼が困る様子を見たがっているようだった。

黒川浩二は眉をひそめた。この役立たずの二人は、重要な時に頼りにならない、偽物の兄弟だと確信した!

坂本加奈は扇子を持ち、輝く瞳で彼を見つめていたが、彼を助けようとする様子はなく、むしろ少し面白がっているようだった。

黒川浩二は予め対策を立てていた。薄い唇を開いて、「藤沢、野村」と呼んだ。

花嫁迎えの一行と一緒に来ていた藤沢蒼汰と野村渉は渋々と入ってきて、躊躇いがちに「黒川社長、私たち二人はストレートな男なので、こういうことは…」

言葉が終わらないうちに黒川浩二に遮られた。「今月の給料三倍」

野村渉は躊躇なく佐藤薫の手から口紅を奪い、口に含んだ。

藤沢蒼汰:「……」

くそ、子供の頃に「富貴に淫せず」を学ばなかったのか!

富貴には淫せないかもしれないが、給料三倍なら話は別だ!

野村渉は藤沢蒼汰の肩を押さえて動かないようにし、目を閉じて口紅を咥えたまま藤沢蒼汰の顔に適当に描き始めた。

その場にいた全員が吹き出した。特に藤沢蒼汰の生きる気力を失ったような表情を見て。

やはり、幸せは他人の不幸の上に成り立つものだ!

野村渉が言葉にできないほどひどい状態の口紅を佐藤薫に渡そうとした時、彼女は見ようともせず、手を振って早く捨てるように示した。

藤沢蒼汰は心が死んだような様子で顔を洗いに行き、この生涯二度と結婚式には参加しないと誓った!

悪夢だ、間違いなく悪夢!!